【6月9日 Xinhua News】中国の有人宇宙船「神舟14号(Shenzhou-14)」が5日、無事に打ち上げられた。これに先立ち「神舟13号(Shenzhou-13)」で宇宙を旅した種子が地上に帰還して1カ月余りになる。これらの「宇宙の種」を用いて、今後、地上でどのような研究が行われるのだろうか。

「神舟13号」に搭載された種子は、中国農業大学や北京林業大学、北京市農林科学院などの大学や研究機関が提供したもので、アルファルファやオーツ麦、食用キノコなどの種子が含まれる。種子は宇宙線や微小重力環境を利用して人為的に突然変異を誘発する突然変異誘発育種を行い、その後のスクリーニングや栽培を通じて作物の農業形質を改良し、優れた新品種を生み出すことを期待して宇宙に持ち込まれた。

 同位元素や放射線照射、化学物質による突然変異誘発など、地上での突然変異育種プロセスと比較して、宇宙環境では、種子に生じ得る突然変異の幅が大きく、変異する箇所もより多く、変異の安定性もより高まる。北京市農林科学院科研処の魏建華(Wei Jianhua)処長は「宇宙環境では、作物の種子は遺伝物質の変異を効果的に起こせることが実践で証明された」と述べた。

 魏氏は「これらの変異は、農業形質が大幅に改良された子孫を得るために、千に一つ、あるいは万に一つの選別という厳格な識別とスクリーニングが行われる。その後さらに育種作業を続けて、農作物の優れた品種が生み出される。こうして誕生した品種はそのイメージから『宇宙品種』『宇宙の種』と呼ばれている」と語った。

「宇宙の種」が本当に人々の役に立つまでには、まだ長い道のりがある。宇宙で変異した株は、地上に戻った後、厳しい選別を受け、数世代にわたる交配と繁殖を経て、ようやく利点が明白で性状が安定した突然変異系統の獲得が可能になる。このプロセスは10年に及ぶかもしれないが、中国の種苗業の自主革新にとって大きな意義がある。

 神舟13号に搭載されたアルファルファの種子は、乳牛などの草食動物にとって重要な飼料だが、中国では現在、質の高いアルファルファの自給率は低く、毎年100万トン以上の乾草を輸入している。宇宙育種の微小重力環境での突然変異は、喜ばしい変化をもたらし、中国の畜産業の発展をさらに促進すると期待されている。

 宇宙船のスペースには限りがあるため、全ての種子が宇宙旅行に適しているわけではない。体積が小さい種子は、より多くの量を持ち込めるため、有益な突然変異を生み出す確率も高くなる。北京市農林科学院は、食用キノコ菌の株を神舟13号で宇宙に送った。菌糸を試験管に詰めることで、宇宙育種の実験条件を満たすことができ、菌糸は地上に帰還後、無性生殖するため、迅速に今後のスクリーニング研究に入ることができる。

 同科学院植物保護研究所の王守現(Wang Shouxian)副所長は「宇宙育種を通じて、より豊かな遺伝的背景を持つ遺伝資源を獲得することで、食用キノコの基礎研究の深化に役立ち、国の遺伝資源のイノベーションに貢献する」と述べた。(c)Xinhua News/AFPBB News