【6月11日 AFP】ロシア軍の完全撤退からまだ日も浅いウクライナの首都キーウ。いまだ不穏な空気が漂う市内にある博物館で、侵攻の第1章を物語る展覧会が始まった。

「国立第2次世界大戦ウクライナ史博物館(National Museum of the History of Ukraine in the Second World War)」で開催されている「Ukraine -- Crucifixion(ウクライナ—受難)」と題された企画展には、キーウを包囲していたロシア軍の撤退後に回収された軍需品や兵士の私物を主に展示している。

 ミサイル、配給食料、ヘルメットなどの展示物は、キーウ北方で4月4日から5月5日にかけて回収された。

 ガラスケースの中には、前線で戦死したロシア軍兵士の個人的な手紙やクレジットカードも展示されている。これらは戦闘初期の重要な記録だ。

 残されたパスポートを見ると、ロシア兵たちが非常に若かったことが分かる。また車のナンバープレートにある「シベリア」の文字は、はるか遠方から来た兵士がいたことを示している。

 イスラム教徒向けに調理したハラル食のボルシチの瓶詰めは、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に忠実なロシア南部チェチェン(Chechen)共和国の独裁者、ラムザン・カディロフ(Ramzan Kadyrov)首長が送り込んだイスラム教徒の兵士に供給されたものだ。

 博物館のユーリー・サウチュック(Yuriy Savchuk)館長は、この展示は「ロシアのプロパガンダに対するわれわれの返事だ」と説明し、ロシア政府は「ウクライナでファシズムなるものと戦う」というドラマを自ら仕立て上げていると語った。

「ここ(企画展)では、この戦争を見て、指先で触れることができます」とサウチュック氏。「衝撃的な展示内容を通じて、何が起きているのかを分かってもらうことも狙いの一つです」

 博物館の地下階には、キーウの飛行場に近いホストーメリ(Hostomel)の臨時シェルターが復元展示されている。実際のシェルターでは37日間にわたって、生後6か月の乳児や子どもを含む数十人が避難生活を送った。湿度が高く衛生状態が劣悪な環境で、2人が死亡した。(c)AFP/Blaise GAUQUELIN