【6月15日 AFP】インド西部ラジャスタン(Rajasthan)州ジャイプール(Jaipur)郊外の村で5月、井戸から3姉妹とその子どもたちの遺体が見つかった。姉妹は、親が娘を結婚させる際に支払う持参金「ダウリ」の犠牲者だ。

 姉妹の生家によると、3人は同じ家族の兄弟と結婚し、同居していた。姉妹の父親が、要求された通りの持参金を支払えなかったため、夫や義理の家族から日常的に暴力を振るわれていたという。

 カルさん、カムレーシュさん、マムタ・ミーナさんの3人は、嫁ぎ先の家の近くの井戸の中で死亡していた。カルさんの4歳の息子と赤ちゃんも一緒に遺体で見つかった。カムレーシュさんとマムタさんは妊娠していた。

 3姉妹の一人は亡くなる前、いとこに「死にたくないけど彼らに虐待されるよりはまし」というメッセージをワッツアップ(WhatsApp)で送っていた。「私たちが死を選んだのは義理の家族が理由。毎日死ぬ思いをするよりは、一緒に死んだ方がいい」と書いてあった。

 ジャイプールの警察幹部はAFPに対し、3姉妹が自殺したとみて捜査を行っていると述べた。

 姉妹の父親サルダール・ミーナ(Sardar Meena)さんは動揺した様子で、3人は生き地獄を味わっていたとAFPに語った。学業を続けたいと望んだが夫は許さず、持参金をもっと支払うよう嫌がらせを繰り返したという。

 婚家には、ベッド数台やテレビセット1式、冷蔵庫1台など多くの物品を収めていたと述べた。「彼らの家を見れば分かる」

 ミーナさんは農民で、収入はわずかだ。「娘が6人いる。渡せるものには限りがある」と訴えた。

 警察は、持参金をめぐる嫌がらせと配偶者虐待容疑で、3人の夫と義理の母親、姉妹の5人を逮捕した。

 AFPは夫側の親族に取材を試みたができなかった。

■「家族の尊厳」

 インドでは、60年以上前に持参金の支払いが違法化され、支払いをめぐる嫌がらせや強要は犯罪となった。

 だが、特に農村部では今でも持参金が支払われている。女性を経済的負担とみなし、嫁として迎え入れる見返りを要求するという社会的慣習がそれを支えている。

 インドでは離婚がタブー視されており、離婚率はわずか100組に1組にとどまっている。このため、既婚女性は虐待されていても離婚をためらうことが多い。

 3姉妹の家族も虐待に気づいてはいたものの、離婚は選択肢になかった。

 ミーナさんは「一度結婚をしたら、家族の尊厳を守るため、嫁ぎ先にとどまるべきだ」と述べた。「再婚させて、その家の状況がもっとひどかったらどうすればいいというのか。私たちの面目がつぶれてしまう」

 国家犯罪記録局(NCRB)によると、2020年には7000人近い女性が持参金絡みで殺害された。1日当たりおよそ19人に上る。同年の「持参金に関する問題」で自殺した女性は1700人以上に上る。

 これらは警察に通報があった人数で、他の家庭内暴力のデータを踏まえると実際の死者数ははるかに多いと専門家は指摘する。

「自由権のための人民同盟(PUCL)」の活動家、カビタ・スリバスタバ(Kavita Srivastava)氏は「1時間に約30~40人の女性が家庭内暴力の犠牲になっている。警察に届け出があっただけでもだ。実際はもっと多い」と述べた。(c)AFP/Aishwarya KUMAR