【6月12日 AFP】南アフリカの片田舎にある人口約3000人のジンゴルウェニ(Zingqolweni)村。約1年前から、ほぼ毎月決まった時期に殺人事件が起きており、村の住民たちはずっと安眠できずにいる。

 ジンゴルウェニは今、「死の村」と呼ばれるようになった。

 これまでの被害者11人は全員高齢者で、大半が一人暮らしの女性。舗装されていない道路に照明灯はなく、日が沈むと村は真っ暗になる。被害者はたちは、そうした時間帯に自宅で刺殺されていた。

 昨年5月に母親を殺害された女性(50)は、墓地から歩いて帰宅する途上でAFPに語った。

「ドアの横で倒れている母を見つけました。血の海でした。喉が切り裂かれていました」

 同居していたおばも、刺殺されているのが見つかった。目撃者や物音を聞いた人はいない。

 ジンゴルウェニでは、ロンダベルと呼ばれるわらぶき屋根の円形の家が、それぞれ隣家との距離を保って立っている。コサ語を話す人々が暮らすこの村から最も近い街はイーストロンドン(East London)で、車で3時間の距離にある。冬になると、午後6時には東ケープ(Eastern Cape)州の山々の向こうに日が沈む。

■手付かずの現金と貴重品 

 南アフリカは紛争地域以外では世界で最も暴力がまん延している国の一つで、平均20分に1件のペースで殺人が発生している。

 それでも、村で起きている連続殺人事件の陰惨さには、経験豊富なの警察官も驚きをあらわにしている。被害者は全員惨殺されており、中には喉を切り裂かれていた人もいる。

「文字通り出血多量による失血死だ」と、ある捜査員は匿名でAFPに語った。

「心理的な動機で高齢者を狙った連続殺人。南アフリカでは例がない」

 これまでに6人の男が逮捕され、今月から裁判が始まる予定となっている。地元警察は、物取りの最中に何らかのトラブルが起きた強盗殺人とみている。

 だが、地元当局のグシニカヤ・コキ(Gcinikaya Koki)氏(64)は懐疑的だ。「事件が起きた家を調べたところ、現金が残されていたそうです」と話し、他の貴重品も手付かずだったとした。「そうなると疑問が生まれます。殺す相手に何を望んでいるのだろうかと」

 これまでに見つかっている手掛かりは、衣服の一部だけだ。

 村は連続殺人犯が野放しになっている恐怖に包まれ、出ていった人や、夜は集まって寝るようになった女性たちもいる。