【6月7日 AFP】インド人登山家ナレンダー・シン・ヤダブ(Narender Singh Yadav)さん(26)がこのほど、世界最高峰エベレスト(Mount Everest、標高8849メートル)の登頂に成功した。ヤダブさんは2016年、エベレスト登頂を偽装したとして、同行した2人の登山家と共に6年間のエベレスト登山禁止処分を受けていた。

 ヤダブさんは3日、AFPの取材に応じ「エベレストはみんなの夢だが、私にとっては人生だ」と語った。「いろいろな疑いを掛けられたので、エベレストに登れるということを証明しなければならなかった」と訴えた。

 ヤダブさんは今でも、2016年5月にエベレスト登頂に成功したと主張している。だが、山頂にいる写真がデジタル加工されていることが発覚し、ネパール政府はヤダブさんの登頂を取り消した。

 これについてヤダブさんは、2020年にインドの名誉ある賞「テンジン・ノルゲイ・アドベンチャー賞(Tenzing Norgay Adventure Award)」の候補に選ばれると、登山隊の隊長がヤダブさんの写真を加工し、SNSに投稿したと説明している。

 これを受け、ヤダブさんは賞の候補から外れた。「自分と家族にとって非常につらい」経験だったと話す。

 ヤダブさんの登山禁止処分は、今年5月20日に解除された。ヤダブさんはその1週間後、エベレストの山頂にいた。今回は登頂を証明するため、多数の写真や動画を撮った。

 ネパール観光局のビーシュマ・ラージ・バッタライ(Bishma Raj Bhattrai)氏は「エベレスト登頂に成功した十分な証拠が提示されたため、1日に証明書を発行した」と述べた。

 トレッキング支援を専門とするパイオニア・アドベンチャー(Pioneer Adventure)の登山ガイド、ペンバ・リタ・シェルパ(Pemba Rita Sherpa)さんは、問題が起こらないよう、通常1人のガイドが同行するところを2人にしたと語った。「ヤダブさんの写真と動画をたくさん撮影した」「真実を話さなければならない。私たちシェルパと会社の評判に関わることだ」

 エベレスト登頂の証明書発行には、写真と、隊長とベースキャンプに駐在する政府の担当者の報告書が必要となる。だが、不正が横行している。

 2016年には、エベレスト山頂にいるような加工写真を提出したインドの警察官夫婦が、10年間の登山禁止処分を受けている。(c)AFP