【6月11日 People’s Daily】中国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)期間中、中国科学院院士で中国独自の宇宙重力波探査「天琴計画」の首席科学者である羅俊(Luo Jun)氏は、中山大学(SYSU)の「天琴1号(Tianqin-1)」衛星が最近、全地球重力場データを取得したことを明らかにした。中国が国産衛星を用いて全地球重力場データを取得するのは、今回が初めてとなる。同技術はこれまで米国やドイツが独占してきたが、「天琴1号」によって、中国は全地球重力場を自主的に探査できる世界で3番目の国となった。

 羅院士の紹介によると、「天琴1号」衛星は、専門の重力衛星ではない。その目的は、宇宙重力波探査キーテクノロジーの検証だが、天琴計画の成功には、多分野の技術の統合・ブレークスルーが必要となる。そのため、多くのフロンティア分野のテクノロジーのブレークスルーが同時に実現した。地球重力場探査はその一つだという。

「天琴1号」衛星は2020年8月7日、約30時間の地球重力場運用試験を実施した。この間、「天琴1号」衛星の主要ペイロードである全地球航法衛星システム(GNSS)受信機と慣性センサーのスイッチが同時に押され、衛星の飛行軌道は全地球のカバーを基本的に達成した。この試験により、全地球15段重力場モデル、全地球重力異常分布グリッド図、全地球ジオイド高分布グリッド図が得られた。データの測定後、中山大学天琴計画チームは、データの分析、論証・計算を繰り返し、最近、全地球重力場データに関する科学報告書を作成し、軌道上試験の総括評価を完了した。

「ただし、『天琴一号』の今回の重力場の測定精度は、高いとは言えない」。羅院士は、この成果のより大きな意義は、低軌道衛星を用いた全地球重力場データ処理技術の全プロセスの逆解析の成功が、その後の中国の重力衛星計画のために確固たる技術的基礎を築いたことにあると述べた。

 紹介によると、地球重力場データは、国の経済と人民の生活にとって戦略的に重要であり、測地学、地球物理学、石油・ガス資源探査、国防・安全保障などの分野で役立ち、地球規模の気候変動、災害防止・軽減など人類が直面する共通の課題への対応にも役立つ、戦略的価値のある基礎データだという。

 天琴計画は2014年に、羅院士が提唱した宇宙重力波探査計画であり、その地心軌道案は、国際的には宇宙重力波探査の「中国案」と呼ばれ、中国独自の国際宇宙重力波探査計画だ。「天琴1号」は2018年に中国国家航天局(CNSA)から正式に認可・立案され、2019年12月に太原(Taiyuan)で打ち上げに成功した。

 羅院士によると、天琴計画はすでに多くの科学技術を生み出し、国家の安全保障と国民経済に貢献している。「天琴2号(Tianqin -2)」検証衛星プロジェクトも順調に進んでいるという。(c)People’s Daily/AFPBB News