【6月11日 AFP】フランス南部マルセイユ(Marseille)にある博物館、コスケール・メディテラネ(Cosquer Mediterranee)で、海底の洞窟壁画が残るコスケール洞窟(Cosquer Cave)のほぼ実物大のレプリカが公開されている。先史時代の海洋生物を描いた洞窟壁画があるのは、世界中でコスケール洞窟だけだ。

 マルセイユ東部にはカランク(Calanque)と呼ばれる入り江を囲む石灰岩の絶壁があり、コスケール洞窟はその海面下37メートルに広がっている。壁に約600点の絵や記号などが残されていることから、「海底のラスコー洞窟(Lascaux Cave)」とも呼ばれている。

 全長130メートル以上の天然の岩の海中トンネルを進んでいくと、洞窟の入り口にたどり着く。

 1985年にプロのダイバー、アンリ・コスケール(Henri Cosquer)氏が岩壁から15メートル離れた海底で偶然に発見した。

 3万年以上前にさかのぼる洞窟および貴重な遺跡は今、深刻な危機にさらされている。気候変動と海面上昇、マイクロプラスチック汚染により、1万5000年にわたって先史時代の人々が創作した芸術が洗い流されてしまう恐れがあるのだ。

 考古学者のリュック・バンレル(Luc Vanrell)氏によると、2011年には洞窟周辺の海面が12センチ上昇。以降、広さ2500平方メートルの洞窟の遺跡全体の記録作業は時間との闘いになり、3Dで洞窟を再現するためデジタルマッピングを行う作業が急ピッチで進められたという。

 地質学者で先史時代の洞窟壁画の専門家、ステファニー・トゥロン(Stephanie Touron)氏は、「すべてのデータから言えるのは、海面上昇が急激に進んでいることです」と語る。「洞窟内の海面は気候変動に伴って上下しています。壁を洗い流し、たくさんの情報が含まれている土壌やその他の物質を浸食しつつあります」

 考古学者のミシェル・オリーブ(Michel Olive)氏は、洞窟が使用されていた当時は「氷河期で、海面も(今より)135メートルも低かった」とし、また「海岸から10キロ以上離れていた」と説明した。