【5月30日 AFP】中国の王毅(Wang Yi)外相と太平洋島しょ国10か国は30日、広範な安全保障協定について協議を行ったものの、合意には至らなかった。

 王外相は10日間の日程で太平洋諸国を歴訪。同日、訪問先のフィジー首都スバから、同国との共同主催でオンライン会合を開き、関係各国の首脳や外相が出席した。

 会合では、南太平洋地域の安保や経済、政治面で中国の関与を劇的に強める内容の協定案をめぐる協議が予定されていたが、一部の首脳が深い懸念を示し、合意に至らなかった。

 フィジーのボレンゲ・バイニマラマ ( Voreqe Bainimarama)首相は会合後、「いつもそうであるように、われわれは合意形成を最も大切にしている」と述べ、「新たな地域協定」を締結する前に大筋での合意が必要との考えを示唆した。

 王外相による歴訪を前に中国が提案した「共通発展ビジョン」には、同国が太平洋島しょ国の警察を訓練する、サイバーセキュリティーに関与する、政治面での連携を強化する、陸海の天然資源へのアクセスを拡大するなどの内容が含まれていた。

 中国側は協定の締結を促すため、巨額の資金援助や自由貿易協定の策定などを提示していた。

 非公開で行われた会合の後、王外相は協定案には言及せず、代わりに太平洋島しょ国10か国が中国の「一帯一路(Belt and Road)」構想に関する覚書を交わしたと発表した。また、中国の計画について懸念している関係者に対しては「心配し過ぎたり、神経質になり過ぎたりしない」よう呼び掛けた。

 太平洋諸国の多くは、気候変動対策や短期的な経済問題に取り組む中で、米中両国との関係のバランスを取りながら中国との友好関係を維持する姿勢を示している。(c)AFP