【5月27日 AFP】これはロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が約束した世界だ。ロシア人を一生恨む──。戦火が広がるウクライナ東部で翻弄(ほんろう)され、破壊されたアパートのコンクリート片に腰掛けた不機嫌そうな少年は、砲撃が聞こえると視線を泳がせた。

 ロシア軍は近くの森を通り、ウクライナ東部クラマトルスク(Kramatorsk)に迫りつつある。建物は一晩のうちにがれきの山と化した。

 エウヘン君(13)一家は廃虚となったハリナ(Galyna)という村からクラマトルスクに避難してきた。

 だがロシアの侵攻も4か月目に入り、ロシアはクラマトルスクへの攻勢を強めている。家族は、再び避難しなければならないかもしれないと考えている。

 エウヘン君は幾つかの石を蹴ると、かつて近くの工場や農場で働く労働者家族の子どもたちが遊んでいた広場に積み重なったがれきの合間を歩き回った。

「怖くない」「砲撃にはハリナで慣れた」と、毅然(きぜん)として首を振りながら強がった。

 母親のリュボフィ・ザハロワ(Lyubov Zakharova)さん(33)は侵攻開始以来、できるだけ息子を外出させないよう努めてきた。

 ハリナでは、ロシア軍と周囲の山に塹壕(ざんごう)をつくったウクライナ軍との激しい戦闘が繰り広げられ、一家は1週間にわたり地元の学校の地下室に身を隠した。

 その後、シングルマザーのリュボフィさんは危険を承知で、エウヘン君と下の娘2人を連れ、20キロ離れた比較的安全なクラマトルスクに急いで移動してきた。

 リュボフィさんは「子どものことが心配で夜も眠れない」と話した。「2歳の娘はストレスで毛が抜け始めている」という。

「子どもたちは外に行きたいといつもせがむけれど、行かせたくない。また移動しなければならないと思う」

 エウヘン君は破壊された建物を見つめたかと思えば、戦闘の続く地平線の向こうに視線を移した。数分間考え込むと、突然語り始めた。

「プーチンの仕業だ。これは、あいつが約束したロシアの世界だ」と言うと、がれきの山となった建物の方を見てうなずいた。

 そして「ロシア人を一生恨むだろう」と怒りのこもった声でささやき、「少なくともアメリカ人は支援してくれた」と言った。(c)AFP/Dmitry ZAKS