【5月27日 AFP】イタリアの首都ローマの地下鉄に設置されたモニターに、乗客の姿が緑色の3D画像で無作為に映し出される。ある乗客が腹部に持ったアサルトライフルが赤く表示された──。これは、北大西洋条約機構(NATO)が行っている地下鉄や空港などで爆発物や武器といった危険物を見つけ出す隠匿物検知システムプロジェクト「デクスター(Dexter)」の実証実験の一場面だ。

 デクスターのプロジェクト期間は3年。過去数十年に公共交通機関や空港、スタジアムなどで発生した集団攻撃を受けたもの。NATO加盟国のフランス、ドイツ、イタリア、オランダのほか、フィンランド、セルビア、韓国、ウクライナから計11の研究機関が参加している。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、NATOはここ3か月、欧州での安全保障に注力しており、同プロジェクトは非軍事面に焦点を当てた科学研究スキームの一つとなっている。

 NATOの平和と安全保障のための科学(SPS)プログラムを率いるデニス・ベーテン(Deniz Beten)氏は、「1、2年以内に地下鉄や空港など各国の選んだインフラ施設に合わせた商業化が可能だ」と語った。

 デクスターは、さまざまなセンサーとソフトウエア技術を組み合わせたもので、公共の場を監視する警察官や警備員にリアルタイムで情報を提供する。

 レーダーシステムでは通行人の高解像度の2D・3D画像を作成し、武器を赤く表示させる。一方、レーザーでは爆発物の痕跡を検出できる。

 探知された情報はソフトウエアで処理され、制御室にいる警察官が着用するスマートグラスにすぐに警告が送られる。

 プロジェクトに参加するオランダ応用科学研究機構(TNO)のアンリ・ボウマ(Henri Bouma)主任研究員によると、容疑者がまだセンサーの付近にいるうちに警察が駆けつけることが可能だ。

 モニターに表示される動画は保存されないという。

 直近1か月の実験で二つのシステムは、爆発物や武器を所持する人物を100%検知できたとしている。ボウマ氏によると、群集を対象とした実験でも成功率は99%以上だった。(c)AFP/Alexandria SAGE