【5月27日 AFP】ウクライナ南部オデーサ(Odessa)近郊に広がる小麦畑。農業従事者のドミトリー・マトゥリャク(Dmitriy Matulyak)さん(62)は、どこまでも続く穂波が豊作を約束しているにもかかわらず、多くの人が間もなく飢えに苦しむことになるのではないかと心を痛めている。

 ロシアがウクライナに侵攻を開始した日、マトゥリャクさんが所有する倉庫の一つが空爆を受け、400トン以上の飼料が灰となった。クリミア(Crimea)半島から出撃したロシア軍の部隊は、ウクライナ南部のかなりの部分を制圧した。

 だが、もっと悪いことが待ち受けているかもしれない。ロシア軍は当初恐れられていたようにオデーサ港に攻め寄せることはなかったが、黒海(Black Sea)の封鎖を続けている。このためウクライナ経済は壊滅的な打撃を受け、世界各地に飢餓の脅威が広がっている。

 ウクライナ各地のサイロや港には、行き場を失った数百万トンの穀物があふれ返っている。温暖な南部は数週間のうちに夏の収穫期を迎えるが、今シーズンの小麦の貯蔵場所はほとんど確保できておらず、大量の穀物が放置され腐敗するのではないかと懸念されている。

「こんなふうに一国の食糧を腐らせ、他の国の人を貧困と飢えに突き落とすなんて、残忍だ」とマトゥリャクさん。「これは残虐行為だ。残忍だ。他に言いようがない」