【5月24日 AFP】オランダの警察は22日、2003年に発生した未解決の殺人事件の手掛かりを得るため、人工知能(AI)を使った合成動画技術「ディープフェイク」で被害者をよみがえらせ、情報提供を呼び掛ける動画を公開した。23日までに多数の情報が寄せられたという。

 ディープフェイクでよみがえったのは、当時13歳だったセダール・ソアレス(Sedar Soares)さん。ロッテルダム(Rotterdam)の地下鉄駅の駐車場で、友人と雪合戦をしていた際に射殺された。

 警察は遺族の許可を得て、動画を作成した。こうした試みは世界初だという。

 1分強の動画は、ディープフェイクでよみがえったソアレスさんが、サッカーボールを拾い、カメラに向かってあいさつする場面から始まる。

 親族や教師、友人らの間を、カメラに向かって歩いていくと、「私の愛する兄弟を殺したのは誰なのか、知っている人がいるはずだ。だから、この動画のために生き返った」とナレーションが流れる。

 ソアレスさんが立ち止まり、ボールを落として、「もっと知っていることがあるなら、話してください」と呼び掛けると、警察の連絡先が表示される。

 ロッテルダム警察の広報担当者リリアン・ファンダイフェンボーデ(Lillian van Duijvenbode)氏は23日、「すでに多数の情報を得ており、非常に心強い」としながらも、寄せられた情報が有益かどうかは確認できていないと語った。

 公共放送NOSによると、警察は当初、ソアレスさんが車に向かって雪玉を投げたことが事件の発端だったとみていた。だが、現在は、ギャング間の強奪に巻き込まれた、間が悪い時に間が悪い場所にいただけの不幸な犠牲者と考えている。(c)AFP