【5月29日 AFP】カリブ海(Caribbean Sea)に面するメキシコ・ユカタン半島(Yucatan Peninsula)の人気リゾート地と考古学的遺跡を結ぶ観光列車「マヤ鉄道(Tren Maya)」は、アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領の肝煎りプロジェクトだ。

 しかし、全長約1500キロの鉄道建設計画をめぐり、環境活動家が法廷闘争を繰り広げている。裁判所は4月、建設工事の一部差し止めを決定した。

 反対派は建設予定地のリゾート、プラヤデルカルメン(Playa del Carmen)とトゥルム(Tulum)の間の区間で、セノーテと呼ばれる淡水の泉や地下水系に取り返しのつかない被害が出る可能性があると懸念する。

 洞窟の専門家で活動家のタニア・ラミレス(Tania Ramirez)さん(42)は「自殺行為です」と言う。「手首を切るようなものです」

 ユカタン半島のリビエラマヤ(Riviera Maya)を訪れる観光客にとって、セノーテは人気の観光スポットだ。エメラルドグリーンやターコイズブルーの水をたたえ、上から注ぐ太陽の光線に照らされ輝いている。

 緑生い茂るマヤのジャングルに無数にあるセノーテは、飲料水の水源である巨大な帯水層につながっている。周辺の地下には洞窟や河川が網の目のように、カリブ海まで広がっている。一帯の地盤を「穴だらけのチーズ」にたとえる活動家もいる。

 だが当初は幹線道路上の高架線とするはずだった計画は、今年に入り、ジャングルの地上部を突っ切る計画に変更された。2023年の開通を目指すロペスオブラドール大統領は、ジャングルの地盤は内陸に行くほどセノーテや河川が少なく強固で、「地下河川にも影響しない」と主張している。

 洞窟探検家で活動家のオットー・フォンバートラブ(Etienne von Bertrab)氏は、当初の計画通り、観光客や労働者が拠点とする街やホテルが並ぶ幹線道路の上に建設するのが唯一の解決法だと言う。

 さもなければ「大統領の遺産は、破壊の遺産となるでしょう」と続けた。(c)AFP/Yussel Gonzalez