【5月20日 Xinhua News】中国雲南省(Yunnan)で2千年余り前に栄えていた古代滇国(てんこく)では、「貯金箱」が財産や地位、権力の象徴だったという。

 貯金箱といっても現代とは様相が大きく異なる。当時のものは「貯貝器(ちょばいき)」と呼ばれ、インド洋から運ばれた貴重な貝殻を貯蔵するために用いられた。青銅製の貯貝器はそれ自体が高価であり、王侯貴族のみ使うことができた。

 史料の記載や考古学的研究によると、当時は雲南省のほとんどの地域が物々交換の段階にあり、貝殻貨幣は普及していなかった。貯貝器は主に礼器として用いられ、格式の高い貴族の大型墓に副葬された。

 貯貝器は当時の先進的な生産力と審美水準を反映している。最も特徴的されるのはふたで、精巧で美しい浮き彫りにより、祭祀(さいし)や戦争、貢ぎ物の献上、狩猟、布織りなど当時の社会生活を再現している。

 同省昆明市(Kunming)晋寧区の石寨山古墓群から出土した「四牛鎏金(りゅうきん)騎士銅貯貝器」のふたには、金メッキされた滇族の騎士が椎髻(ついけい、まげの一種)姿で腰に剣を着け、はだしで馬にまたがり、その周りを巨大な角と背骨を持つコブウシ4頭が囲む様子が表されている。

 また「詛盟貯貝器」と呼ばれる器物のふたには、127人もの人物が彫刻されており、2千年以上経った今でも、当時の激しい戦、市場での商売、騎馬での狩猟、トラとヒョウの格闘など、にぎやかで生き生きとした情景を伝えている。

 雲南省博物館の樊海濤(Fan Haitao)副館長によると、滇国の人々は歴史を記録するための体系的な文字を持たなかったため、貯貝器が同国の文明を研究する上で最も真実に近く、直感的な資料になるという。樊氏はこれらを「文字のない歴史書」と呼んだ。(c)Xinhua News/AFPBB News