【5月18日 Xinhua News】中国各地で中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)が発行する電子通貨「デジタル人民元」を体験する人が増えている。銀行やインターネット企業、小売業者などの後押しを背景に、利用範囲が広がっている。

 デジタル人民元の実証実験は2017年以降、広東省(Guangdong)深圳市(Shenzhen)や江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)、北京冬季五輪・パラリンピックの会場となった北京市と河北省(Hebei)張家口市(Zhangjiakou)など各地で展開。対象範囲は長江デルタや珠江デルタ、京津冀(北京市・天津市<Tianjin>・河北省)、中部、西部、東北部、西北部などさまざまな地域に及ぶ。

 人民銀は先月2日、実証実験の対象範囲を従来の地域に加え、天津、重慶(Chongqing)、広東省広州(Guangzhou)、福建省(Fujian)福州(Fuzhou)・アモイ(Xiamen)の各市と第19回アジア競技大会が開かれる浙江省(Zhejiang)の6都市に広げるほか、北京冬季五輪・パラ会場での試験運用が終了した北京と張家口も実証実験地域に移行させたと発表した。

 電子商取引(EC)大手の京東集団(JDドットコム、JD.com)やIT大手の騰訊控股(テンセント、Tencent)、フードデリバリーなど生活関連サービスを手掛ける美団、動画配信大手の嗶哩嗶哩(ビリビリ、bilibili)などのインターネットプラットフォーム運営会社もデジタル人民元の到来を迎えている。

 テンセント傘下の通信アプリ「微信(ウィーチャット、Wechat)」は、全ての実証実験地域でデジタル人民元への対応を可能にしたほか、美団のアプリではデジタル人民元の実証実験に参加した21年9月から今年5月初めまでに400万人以上がデジタル人民元で決済した。

 北京大学経済学院の曹和平(Cao Heping)教授は「デジタル人民元の革新的な応用は、人々によりグリーン(環境配慮型)で包摂的な選択肢を提供した。人々はデジタル人民元に対する熱意を低炭素生活のための原動力に転化させている」と語った。

 人民銀のまとめによると、デジタル人民元の実証実験シーンは21年12月末時点で808万5100件を超え、個人向け電子財布の開設数は2億6100万件、取引額は875億6500万元(1元=約19円)に上った。

 人民銀はこのほど開いた座談会で、デジタル人民元の研究開発について、実証実験が進むに従い、利便性や包摂性、革新性、安全性、コンプライアンス、持続可能性などの面で新たな状況や問題に直面するようになったことから、研究と模索をさらに深化させる余地があると指摘。次の段階では、各参加者がデジタル人民元の試行事業を着実に進め、実証実験の範囲を段階的に拡大していく方針を示した。(c)Xinhua News/AFPBB News