【5月20日 AFP】元ロシア兵のマラト・ガビドゥリン(Marat Gabidullin)さん(55)は、ロシア民間軍事企業「ワグネル(Wagner)」の傭兵(ようへい)として5年近く働いた。ウクライナ東部やシリアに派遣されたこともある。

 だが、ウクライナでの戦闘が続く今、ガビドゥリンさんはウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)政権は外国への軍事介入を停止し、ロシア国民の生活改善に注力すべきだと考えている。

 謎に包まれたワグネルは、プーチン政権下の近代ロシアにおいてここ10年、最も物議を醸す存在となっている。所属する傭兵は、シリアやウクライナ以外にリビア、中央アフリカ、マリなどアフリカ諸国にも派遣されている。

 ガビドゥリンさんは、2015年から19年までワグネルに勤務した。今年、ワグネルに関する書籍をロシア国内で出版。同社の元傭兵として初めて、同社を批判した。著書はフランス語にも翻訳された。

 ガビドゥリンさんはAFPのインタビューに応じ、ワグネルは「小規模な軍隊のようなものだ」と語った。

 ロシア政府が傭兵を使っていることや、時には道徳的規範・価値に相反するようなことを傭兵にやらせているのを明らかにしたかったと話す。

 戦う以外の仕事を知らない百戦錬磨の兵士や、戦争を経験してみたい「ロマンチスト」もいるが、傭兵の大半は月何千ドルにもなる報酬目当てだという。

「ロシアでは、この額を稼げる場所は他にない」

 ガビドゥリンさんは、ロシアの正規軍にも10年勤務した。犯罪組織のトップを殺害したことから3年服役したこともある。ガビドゥリンさんいわく、借りを返したのだという。

 知人のつてをたどってワグネルに入った。

 チェーンスモーカーのガビドゥリンさんはAFPに、15年にはウクライナ東部の親ロ派武装勢力と共に戦い、19年までシリアで複数の作戦に加わったと話した。

 AFPはガビドゥリンさんの経歴について裏付けを取れていない。

 本の出版後、身の安全のためロシアを離れ、現在はフランスで暮らしている。