【5月13日 AFP】ロシアがウクライナへの侵攻を開始した2月時点では、ウクライナが勝利する事態は西側においては想定外だった。だが、ロシア軍は短期決戦に失敗。ウクライナ支持派の間では、「ウクライナ勝利」もあり得るのではないかとみられ始めている。シナリオを想定してみた。

■クリミア半島の奪還

 リズ・トラス(Liz Truss)英外相は先月末、ロシアは「ウクライナ全域」から排除されなければならないと述べ、2014年にロシアが併合したクリミア(Crimea)半島の奪還を英政府として支持する考えを示唆した。

 ただ専門家は、クリミア半島奪還はほぼなさそうだとみている。

 フランスの元外交官で、パリのモンテーニュ研究所(Institut Montaigne)の特別顧問を務めるミシェル・デュクロ(Michel Duclos)氏はこのシナリオについて、「(クリミア併合後に)正統性を強めた(ウラジーミル・)プーチン(Vladimir Putin)政権に疑問を投げ掛けることになる」との見解を示した。

 元仏軍大佐のミシェル・ゴヤ(Michel Goya)氏は「軍事バランスは拮抗(きっこう)しており、(ウクライナが)いきなり華々しい勝利を収めるとは想像し難い」と語る。

■侵攻前の状態維持

 ロシアは首都キーウの制圧という当初の作戦目標を断念したとみられ、北部からは撤退したものの、東部や南部の広い地域を依然掌握している。ウクライナ側はこれに対し、2月24日の侵攻開始後にロシア軍が占領した地域の奪還を試みている。

 デュクロ氏はこれについて「(ウクライナ側にとって)一種の勝利とはなり得るが、戦果が必要になるだろう」と予想。また、ロシアの体面を保つ方策を見いだすための外交努力も求められるだろうと述べた。

 ロシアのシンクタンク、外交防衛政策評議会(CFDP)の名誉議長で、元ロシア大統領府顧問のセルゲイ・カラガノフ(Sergei Karaganov)氏は「(ロシア側に)敗北の余地はない。何らかの勝利を手にしなければならない」との見方を示した。

 政治アナリストのウラジーミル・ソコル(Vladimir Socor)氏は、米国のジェームズタウン財団(Jamestown Foundation)​主催の討論会で、ロシア軍が占領地域から撤退する場合、ウクライナの外交にロシア側が干渉しないことが保証されて初めて意味を持つと語った。

 ただし、ロシア軍が撤退したとしても、親ロシア派が2014年以降、支配している東部のドネツク(Donetsk)、ルガンスク(Lugansk)両州については、ロシアが事実上、掌握し続けることになる。

 米軍事戦略家のエドワード・ルトワック(Edward Luttwak)氏は、ウクライナが両州を放棄するわけにはいかず、ロシアとしても両州を手放して立ち去るわけにはいかないと解説する。

 ルトワック氏はツイッター(Twitter)への投稿で、住民投票がただ一つの解決策になるとの見方を示した。ロシアとしては、投票を実施したこと自体、勝利だと喧伝(けんでん)できるからだ。