■泥沼化

 ロシアが作戦目標をドンバス地方全域の「解放」に切り替えて以降、戦局はこう着状態に陥っている。

 欧州外交評議会(ECFR)のマリー・デュムラン(Marie Dumoulin)氏は、戦局の急激なエスカレートなしに軍事対立が続くというのが、想定シナリオの一つだと話す。

 前出のゴヤ氏は、ロシア軍をキーウから遠ざけ、黒海(Black Sea)へのアクセスを保持することで、ウクライナ側としては勝利と見なすことも可能になると説明する。

 ロシア側は、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の一方的な独立という現状の維持と、アゾフ海(Sea of Azov)沿岸にある複数の主要都市の掌握をもってして「勝利」だと言い張るかもしれない。ただ専門家に言わせれば、ロシア政府にとって、その程度で十分となる公算は小さい。

 ジェームズタウン財団のマルガリータ・アセノバ(Margarita Assenova)氏は、 ウクライナにとっても、ドンバス地方の離脱を正式に認めることは耐え難いため、同地方全域の奪還まで戦闘をやめることはないだろうと予想する。

 同氏は「多くの残虐行為とウクライナ国民の拉致という現実を前に、ウクライナ政府には他の選択肢を選ぶ余地はほとんどない」と話した。(c)AFP/Marine PENNETIER