【5月11日 AFP】リビア北西部の町ガリヤン(Gharyan)には、何世紀も前に掘られたユニークな岩窟住居群がある。多くは廃虚となったまま放置されてきたが、住民らの間で観光スポットとして復活させようとの動きがある。

 首都トリポリの南方約100キロ、ベルベル人とアラブ人が混住するガリヤンで最古の住居の一つに住む、アルビ・ベルハジ(Al-Arbi Belhaj)さんは「祖父よりも何世代もさかのぼる先祖が、355年前にここを掘ったのです」と語った。

 海抜約700メートル、ナフサ(Nafusa)山脈の中腹に深く掘られたベルハジさんの家。気温45度にも達する灼熱(しゃくねつ)の夏からも、雪の多い冬からもしっかり守られてきたのだろう。

「ダモース」と呼ばれる穴居住宅が何世紀も崩れずに残っているのは、この地域の土壌に粘性があるからだ。

 1967年生まれのベルハジさんは、この岩窟住居で誕生した最後の一人だ。一家は1990年に引っ越したが、現在は観光スポットとして改装し、よみがえらせようとしている。

 2011年に故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐による独裁政権が崩壊して以降、リビア全体の観光客は減っているが、この地域のベルベル人の村々は今でも国内旅行で人気が高い。ベルハジさんは、いずれは国外からの観光客も誘致できると期待している。

 歴史学者のユセフ・ハタリ(Youssef al-Khattali)氏によると、一部の岩窟住居は2300年以上前にさかのぼるものだ。またフェニキア人が栄えた時代の埋葬地もあるという。

「初めは人間と家畜のための地下住居があり、それから礼拝場所として建物が造られました」とハタリ氏。「山の数か所にはとりでの跡と分かるものがあります。見張り塔の跡などです」

 ハタリ氏は、岩窟住居は「多目的に使えるように設計されており、時の試練にも耐えています」と説明する。「だからリビアの建築史上、極めて重要なのです」

 映像は4月21日と5月3日に取材したもの。(c)AFP/Jihad Dorgham