【5月11日 AFP】英スコットランドで発達した伝統的なタータンチェックの織物が、北東部キース(Keith)の工場でゆっくりと織り上げられていく。緑、赤、黒、青、白の糸を組み合わせた大柄の格子じまは、世界中で広く知られている。

 この巨大な工場で今ひときわ目立っているのは、明るい青のロイヤルブルーと黄色という珍しい色使いのタータンだ。

「ウクライナ・フォーエバー」と名付けられたこのタータンは、ロシア侵攻の被害者への寄付集めに一役買えればと、グレート・スコット(Great Scot)社が数週間前から織り始めた。

 同社関係者はAFPに対し、ウクライナ情勢に関する報道に胸を痛め、自分たちにできることはないかと考えて思い付いたのが、新しいタータンをデザインしようということだったと語った。実際に作ってみると「世界中から驚くほど反響があった」という。

 タータンは、2色以上の糸で織る格子じまで、スコットランドの公式の織物と位置付けられており、伝統の男性用巻きスカート「キルト」にも用いられる。18世紀に一度禁止されたものの、その後は、政治やファッションの表現手段として世界中に広まった。

 同社が「ウクライナ・フォーエバー」をフェイスブック(Facebook)上で初披露すると、投稿は1万回もシェアされ、約14万の「いいね」と2700以上のコメントが付いた。またウクライナ外務省も、この取り組みをツイッター(Twitter)の公式アカウントを通じて歓迎した。

 ウクライナカラーのタータンは、長さにして計3.2キロ以上が既に販売された。特に米国や、外国に駐在するウクライナ人からの購入希望が多いという。

 この新タータンは、スコットランドのタータン登記所に正式登録されており、収益の一部が英慈善団体「災害緊急委員会(DEC)」のウクライナ人道支援(Ukraine Humanitarian Appeal)に寄付されている。

 グレート・スコットの創業者は、「最終的に4万~5万ポンド(約600万~800万円)以上の寄付を集める」ことを目標にしている。また、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領にキルトを着てもらうことが夢だとも話している。

 映像は4月28日撮影。(c)AFP/Véronique DUPONT