【5月14日 AFP】ロシアほどの広大な国では通常、人里離れた工場やビルで火災が起きても特に不審がられることはない。だが、2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻して以来、ロシア国内のソーシャルメディアでは十数件の火災が大きな注目を集め、ウクライナ側勢力による組織的な放火がささやかれている。

 4月21日、モスクワ北西約200キロに位置する都市トベリ(Tver)の航空宇宙軍中央研究所で火災が起き、少なくとも17人が死亡した。4月下旬から5月初旬にかけても、西部ブリャンスク(Bryansk)の2か所の燃料貯蔵施設、極東ウラジオストク(Vladivostok)北部の空軍基地、サハリン(Sakhalin)の火力発電所、中部ペルミ(Perm)の軍需工場、モスクワ東方ゼルジンスク(Dzerzhinsk)の化学工場で火災や爆発が相次いだ。

 犯行声明は出ていないが、専門家は少なくとも一部の火災、特にブリャンスクの火災に関しては、ウクライナ政府が関与した可能性を指摘している。

 ウクライナ大統領府のオレクシー・アレストビッチ(Oleksiy Arestovych)顧問は米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)の質問に対し、イスラエルは隠密作戦による攻撃や暗殺を決して認めないと述べ、同様に「われわれも認めもしないし、否定もしない」と言葉を濁した。

 紛争問題の専門家は、欧州に石油を供給しているブリャンスクの燃料貯蔵施設での大火災は、ウクライナ紛争絡みの放火が原因だとの見方を示している。

 ツイッター(Twitter)で「Ukraine Weapons Tracker(ウクライナの兵器追跡)」というアカウントを運営している匿名のアナリストは、ブリャンスクの火災はウクライナ軍の軍用無人機「バイラクタル(Bayraktar)」の攻撃によるものとする「確かな」情報を入手したと主張。

「もしこの情報が正確であれば、ウクライナ軍には長距離兵器でロシア領土に攻撃を仕掛ける能力があることを改めて示すものとなる」と述べている。

 別の専門家、ロブ・リー(Rob Lee)氏は英紙ガーディアン(Guardian)に対し、「おそらくウクライナによる攻撃だと思う」としながらも、「断定はできない」と述べた。

 米国防総省の高官は、ウクライナに侵攻したロシア軍は物資補給が滞り前進を阻まれているが、ロシア国内のインフラへの攻撃でさらに影響が出るだろうと指摘している。

 しかし、ロシア国内でウクライナ侵攻とは直接関係のない標的を狙った破壊工作が行われている可能性について、米政府関係者はコメントを控えている。(c)AFP/Paul HANDLEY