【5月1日 AFP】米国はウクライナへの軍事支援強化に向け、国際会議を主催したほか330億ドル(約4兆3000億円)の追加予算を議会に要求した。一方で、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領による核兵器使用の脅しを無視し、プーチン氏の限界を試そうとしている。

 米国は4月26日、ドイツの米軍基地で40か国に声を掛けてウクライナ支援に向けた国際会議を主催。プーチン氏は翌日、他国の介入があれば「電光石火の対応を取る」と警告。「そのための手段は全て持っている」「われわれはそれを自慢するのではなく、必要があれば使用する」と発言した。

 これは、戦術核兵器使用への遠回しな言及だ。ロシアの軍事ドクトリンでは、敵を撃退するための核使用は認められている。

 だが、ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領はロシアの威嚇に引き下がることなく、対ウクライナ支援予算を倍増させた。追加予算のうち200億ドル(約2兆6000億円)は兵器・防衛装備品に充てられる。これは、2月24日のロシアによる侵攻開始以来の累積支援額の7倍近い規模だ。

■もはや隠さず

 侵攻開始当初、米政府はウクライナ軍に「防衛用」以外の兵器を積極的に供与すれば、米国や北大西洋条約機構(NATO)とロシアとの直接的な衝突に発展しかねないと懸念していた。

 今や米国防総省は、これまで抑制していたのと打って変わって、重火器やヘリコプター、攻撃用無人機といった攻撃用兵器を提供している。また、供与した武器を運用できるよう、ウクライナ兵を訓練していることも明かした。

 さらに、米国の目標はウクライナが生き残るための戦いを支援することにとどまらず、長期的にロシアを弱体化させることにあると主張し始めた。

 先週キーウを訪問したロイド・オースティン(Lloyd Austin)国防長官は「ロシアがウクライナに侵攻したのと同じようなことができない程度に弱体化することを望んでいる」と述べた。

■脅威を一蹴

 プーチン氏による核の脅しは、米政府内では受け流されている。バイデン氏は4月27日、「ロシアが(ウクライナで)やろうとしたことが惨めに失敗し、切羽詰まっている証しだ」と語った。

 国防総省高官は29日、ロシアの核戦力に対する監視は継続しているが 「核兵器使用の脅威はなく、NATO圏への脅威もないと評価している」と説明した。

 英ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)のローレンス・フリードマン(Lawrence Freedman)名誉教授は、ロシアがウクライナで核兵器や化学兵器を使おうとしている兆候は見られないと指摘。自身のブログに「その脅威は以前ほど深刻には受け止められておらず、肯定する材料は何もない。すでに力を失っている」と記している。

 米外交問題評議会(CFR)のギデオン・ローズ(Gideon Rose)氏も、同じ見解だ。「ロシアが今回の紛争中に核兵器を使用することはないだろう」とし、「(使用すれば)桁外れの報復と世界中からの非難が待ち構えており、そうしたことを正当化できるような戦略的な利点は皆無であることを(プーチン氏は)承知している」と語る。

 バイデン氏は繰り返し、米軍はウクライナに直接関与しないと主張してきたが、支援が急拡大したことでウクライナ危機は代理戦争と化していると、米プリンストン大学(Princeton University)の軍事専門家サム・ウインターレビー(Sam Winter-Levy)氏はウェブサイト「ウォー・オン・ザ・ロックス(War on the Rocks)」で指摘した。

「西側諸国は、現状を明確に認識する必要がある。西側は現在、ロシアと代理戦争を繰り広げている。エスカレートする現実的な危険性は非常に高い」

 一方で同氏は、現行方針は「それでも最善の選択肢かもしれない」と認める。「結局のところ、代理戦争より悪い選択肢は、ロシアが楽に勝ってしまうことか、米ロが直接対決することだ」と述べた。(c)AFP/Sylvie LANTEAUME