【5月22日 AFP】メキシコ人女性のカルメン・サンチェス(Carmen Sanchez)さん(37)は、自分を虐待していたパートナーと別れた後、酸で襲撃され重傷を負った。今、その治癒の一環として、同様の被害を受けた女性たちの人生の立て直しを手助けしている。

 人生を一変させた酸攻撃から8年間、皮膚の再建や移植を含め、61回に及ぶ手術を受けた。

「耐える毎日ですが、完全に治るのかどうか分かりません」。傷痕を隠すために黒いサングラスを着けたサンチェスさんは語る。「事故に遭ったのでも、生まれつきでもありません。計画的に酸を買い、私に浴びせたのです。鏡を見るたびに、彼の姿が浮かびます」

 サンチェスさんは昨年、「酸による暴力に終止符を打つ」ために、自分の名前を冠した「カルメン・サンチェス基金」を設立した。犠牲者には親交と友情が不可欠だ、というのが基金の信条だ。

 基金はさまざまな難題に直面しているという。犠牲者が限られた医療しか受けられない公的保健制度や、加害者が処罰を免れてしまう実効性のない司法制度などだ。

 メキシコでは、ジェンダーに基づく暴力(GBV)が大きな問題となっている。2021年には女性が殺害された事件が約3750件あり、そのうち約1000件がフェミサイド(女性を標的とした殺人)だった。

 カルメン・サンチェス基金の記録によると、2001年以降に起きた女性に対する酸攻撃は31件で、そのうち6人が死亡している。酸攻撃の発生件数は増加傾向にある。