【4月28日 AFP】ロシアの爆撃で壊滅的な被害を受けているウクライナ南東部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)。エウヘン・ティシチェンコ(Yevgen Tishchenko)さん(37)とテチアナ・コミサロワ(Tetiana Komisarova)さん(40)夫婦は、6~12歳の子ども4人を連れて、故郷を脱出する方法は一つしかないと覚悟を決めた──徒歩だ。

 一家は22日、南部ザポリージャ(Zaporizhzhia)で西へ向かう列車を待つ間にAFPの取材に応じた。涙と笑いを交えながら、安全を求めて歩いた125キロに及ぶ奇跡の旅路を振り返った。

 夫婦は出発の数週間前から、ユリヤちゃん(6)、オレクサンドル君(8)、アンナさん(10)、イワン君(12)に、この先に待ち受ける旅の危険を説いた。「地下壕(ごう)にいた2か月間、これからどこへ行くかを説明した」とテチアナさん。「子どもたちは、冒険だと捉えていた」

 今月17日、ついに動く時が来たと判断した。

 エウヘンさんとテチアナさんは緊張しながら、子どもたちを先導してアパートを出た。家族そろっての外出は、2月24日のロシアの侵攻開始以来、初めてだった。

 目の前に広がっていたのは、破壊の限りを尽くした恐ろしい光景だった。

 地下室を抜け出して水や食料の調達に出ていた大人たちは、何が待ち受けているのか予期していた。だが、子どもたちは、砲弾の直撃を受けるアパートの地下にずっと隠れて暮らしていた。

「周囲を見た子どもたちは、黙って歩いていた」とエウヘンさんは話した。「何を考えていたのかは、分からない。私たちと同じく、故郷の街がなくなってしまったことが信じられなかったのかもしれない」