【5月3日 AFP】カリブ海(Caribbean Sea)の島国バハマの離島に生息する絶滅危惧種のイグアナが、エコツーリズムで訪れた観光客に与えられたブドウによって甘党かつ高血糖になっているとの研究結果が4月21日、発表された。

 エグズーマ諸島(Exuma Islands)に生息するバハマツチイグアナは、観光客にもらうブドウが大好物になり、船が近づく音を聞きつけると浜辺に殺到する。米シェッド水族館(Shedd Aquarium)のチャールズ・ナップ(Charles Knapp)氏によれば、エコツアーを主催する旅行業者にとって、餌やりは野生動物を間近で観察し触れ合う機会を参加者に確実に提供できる素晴らしい手法だった。

 自然保護団体は、外来種の果物を餌としてもらうのに慣れたイグアナは人間への警戒心が薄れてエキゾチックペットの密輸業者に狙われやすくなると懸念していた。だが、研究者はイグアナのふんに着目し、もっと大きな問題が起きている可能性を疑い始めた。

 米ユタ州立大学(Utah State University)のスザンナ・フレンチ(Susannah French)教授によると、現地に自生する植物の葉や実を食べるバハマツチイグアナは「キューバ葉巻」のような形状のふんをする。一方、観光客が与えるブドウに味を占めたイグアナの排せつ物は水っぽい。

 科学誌「ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・バイオロジー(Journal of Experimental Biology)」に掲載された研究では、まず一般的なグリーンイグアナを用いた実験で、糖質の多い餌が及ぼす影響を調べた。すると、長期的にブドウ糖を与えられたイグアナは血糖調節がうまくいかなくなることが分かった。

 次に、バハマの四つの島でイグアナ48匹を捕獲し、ブドウ糖液を与えて約24時間にわたり血糖値を測定した。イグアナの半数は観光客がよく訪れる場所で、残りは人の入らない保護地域で捕まえた。

 観光客がよく訪れる島のイグアナは血糖値のピークが最も高く、高血糖状態が数時間続いた個体もあった。一方、人と触れ合ったことのないイグアナは血糖値の上昇ペースが緩やかで、速く正常値に戻ることが分かった。

 フレンチ教授は「他の生物では、この状態は病的だといえる。マウスや人間なら糖尿病に相当する」と指摘。今後は、免疫から生殖までイグアナの健康へのさまざまな影響について研究すると述べた。

 研究チームは、イグアナが現地に自生する植物を食べなくなることで島の環境に及ぼす影響についても調査している。

 観光客が善意で与えた不適切な餌によって野生生物が影響を受けた事例は、イグアナ以外にもある。2018年に発表された研究では、スペイン領カナリア諸島(Canary Islands)で観光客に餌付けされたカメについて、血液中のたんぱく質と脂肪の値が高いことを示す結果が出ている。(c)AFP/Kelly MACNAMARA