自由の実現か、ヘイト横行か マスク氏買収後のツイッター
このニュースをシェア
【4月28日 AFP】「言論の自由絶対主義者」を自称する実業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏(50)が米ツイッター(Twitter)を買収することで、同サイト上でヘイトスピーチや偽情報が横行するのではないかとの懸念が、人権団体から上がっている。
総額440億ドル(約5兆6000億円)でツイッターを買収する予定のマスク氏は、同社がツイートを過剰に規制しているとして、改革を示唆。権利活動家は、過激な投稿を理由に同サイトから追放された人々の復帰を認めるのではないかと懸念している。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)」米国支部のマイケル・クラインマン(Michael Kleinman)テクノロジー・人権担当ディレクターは、ツイッターが女性や、性自認が男女のどちらにも当てはまらない「ノンバイナリー」などの人々に対する暴力的な表現に「故意に目をつぶるようなことがあってはならない」と訴えた。
ツイッターは近年、他のSNS同様、サイト上の偽情報やいじめ、ヘイトスピーチへの対応に苦慮しており、暴力の扇動や、人種・宗教・性自認・障害などに基づいた脅迫などを理由に多くのアカウントに利用停止処分を科してきた。
ツイッターから追放された著名人には、白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」の元最高幹部デービッド・デューク(David Duke)氏や、極右の陰謀論者アレックス・ジョーンズ(Alex Jones)氏、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前米大統領がいる。
また、新型コロナウイルスに関する偽情報の抑制に取り組んでいるほか、極右陰謀論「Qアノン(QAnon)」に関連するアカウント数千件を削除している。昨年1月6日に自身の支持者が起こした連邦議会襲撃事件をきっかけにアカウントを凍結されたトランプ氏は、マスク氏が許可してもツイッターには復帰しないと宣言している。
だが、大手SNSがシリコンバレー(Silicon Valley)のリベラル派によって運営されているとの苦言を長年にわたり呈してきた保守派は、マスク氏のツイッター買収を歓迎。共和党のマーシャ・ブラックバーン(Marsha Blackburn)上院議員は「イーロン・マスク氏が、異なる視点を持つユーザーを検閲してきたテクノロジー大手を止めることを期待している」とツイートした。
一方で、マスク氏が考える言論の自由はそう簡単には実現できないかもしれないと指摘する声もある。例えば欧州連合(EU)では、今後導入される予定の「デジタル・サービス法(Digital Service Act)」に従う必要がある。同法の下では、禁止コンテンツを掲載したSNSに厳格な罰則が科される。
また、ツイッターに多くの変更を加えることでユーザー離れが生じることをマスク氏が懸念するだろうとの見方もある。マスク氏は撤廃する規則の具体例を示していないが、26日のツイートでは「法律を大きく超越する検閲には反対だ」と説明した。(c)AFP/Peter HUTCHISON