【4月28日 AFP】戦闘が続くウクライナから遠く離れたロシアの首都モスクワにも、春が訪れた。人々の暮らしはいつもと変わらないように見える。少なくとも表面上は──。

 厳しい冬が終わった。モスクワっ子はレストランや劇場、美術館に繰り出し、穏やかな日差しを浴びながらそぞろ歩いている。

 いつもと変わらないように見える街には、しかし、強い不安感が漂っている。西側諸国の制裁の下、国際的に孤立する国の将来を悲観する人も多い。

 中心部のカフェでは、コーンハットをかぶった3人の若い女性が誕生会を開いていた。笑いながら、自撮りしている。

 そのうちの一人、オレシャさんは「人生は続く。誕生日にはお祝いしないと」と話した。「ニュースばかり見ているわけにはいかない」

 ウクライナへの侵攻を受け、ロシアには制裁が次々に科された。多岐にわたる物品の輸入が止まり、西側企業がロシアからこぞって撤退した。

 インフレは高進、大勢が失業したが、当局は危機は乗り切れると言い張っている。西側の製品や高級ブランドは入手が困難になったものの、広範な品不足には陥っていない。

 赤の広場(Red Square)近くで開かれていた現代美術フェアを訪れていたアレクサンドルさん(40)は、貿易関係の職を失った。それでも「良い面」に目を向けようとしていると話す。

「(国営)テレビを見ていては無理だとしても、情報を得ることは重要だ。家族と国を助けなければならない。旅行に出掛けたり、美しい絵を見たりすることもまた必要だ」

 AFPが取材した他の多くの人と同様、安全が保証されていないため、アレクサンドルさんも姓を名乗らなかった。

 民間航空会社の操縦士、アンドレイさん(26)は、航空業界は制裁によりほぼ休業状態だと語る。「キャリアアップはもう望めなくなった」

 アンドレイさんは、特に反体制派の取り締まり強化など、近年のロシアの路線に衝撃を受けていると言う。

 2014年、ロシアがウクライナのクリミア(Crimea)半島を併合した時は軍にいた。

「幸せな愛国者だった。『すばらしい国に暮らし、すばらしい未来が待っている』と思っていた。それなのに弾圧が始まり、『21世紀にこんなことが起きるなんてどういうことだ』と思った」

 アンドレイさんは、ロシアが以前の状態に戻るとは今のところ考えていない。「いつも通り」は2月24日に終わった、と話した。

 英ロンドン在住のエレオノラ・ハルメトワ(Eleonora Halmetova)さん(25)は、両親に会うため2年ぶりに帰省中だ。

「政府や政治について話す時は誰もが慎重になっている」と感じた。「2年前は自由に話せていた。今回は教師をしている友人に『話は外で』と言われた」 (c)AFP/Andrea PALASCIANO