【4月24日 AFP】ウクライナ東部のエレナ・イワノブナ(Elena Ivanovna)さんが住む村に2月、ロシア軍が進攻してきたのを受け、一家は日が昇る前に荷物を車に積んでハルキウ(Kharkiv)に逃れた。しかし、そこは最前線だった。

 ハルキウは人口150万人のウクライナ第2の都市。ロシア軍の侵攻当初から制圧の標的となり、昼夜を問わず攻撃にさらされている。

 店舗は吹き飛ばされ、居住区からは煙が立ち上っている。イワノブナさん一家をはじめ、人々は地下鉄駅への避難を余儀なくされた。

 イワノブナさん一家が暮らす村は、ロシアとの国境から10キロしか離れていない。侵攻が始まった2月24日夜、一家は眠っていた。

「朝4時半に目が覚めた。子どもたちも起きてきて、すぐにこれは戦争だと悟った」とイワノブナさん。「窓越しにすべてが燃えているのが見えた。自宅も揺れた」と振り返る。

 夫と8歳、10歳、17歳の子どもは急いで着替え、わずかな持ち物を持って自宅の地下室にまず避難した。

「15分後、静かになった。車に駆け込み、ハルキウへ向かって飛ばした」

 途中、ミサイルが「至る所に落ちる」のが見えたという。

 イワノブナさんはハルキウで母親と合流。だがそこも攻撃にさらされていた。

 一家は再び地下室で身を寄せ合った。6日間を過ごした後、より安全な場所に逃れる必要があると感じ、地下鉄駅に向かった。

■構内の日常

 2か月たった今も、約700人がハルキウ市内の地下鉄駅で暮らしている。

 マットレスや毛布、ベッド、机、いすが構内に運び込まれた。ボランティアが定期的に通路を掃除し、電気も通っている。

 読書やひと眠り、おしゃべり、構内の散歩―。平穏な時には、地下鉄駅の住人たちは自分たちに許されたことをしている。

「ボランティアが1日に3回、食事を持ってきてくれる。温かい食事や子ども向けのお菓子、プレゼント、おもちゃ、えんぴつまでも」とイワノブナさん。

 子どもたちはここ1か月間、対面とオンライン授業を組み合わせて、地下で学習を再開している。

 ボランティアは気晴らしのため演劇やコンサート、人形劇、運動の講習も開いてくれる。

 しかし、地上では戦闘が依然、続いている。

 イワノブナさんは、攻撃があると子どもたちはいまだに「目を覚まし、震え、薬がほしいと言う」と話した。「ロシア兵がすべて去り、ミサイルの爆発音を聞いたり、ミサイルが飛んでくるのを見たりしなくても済む」時が来るのが待ち遠しいと語った。(c)AFP/Emmanuel PEUCHOT