【5月20日 AFPBB News】最先端のエンジンを開発・製造し、船外機や二輪車で世界的なシェアを誇るヤマハ発動機(Yamaha Motor)。そんな日本を代表するメーカーが、ハイテクとは懸け離れた、自然の原理を利用したプリミティブな技術を使った浄水装置ビジネスを開発途上国で展開している。

 ヤマハ発動機が自社開発したのは「ヤマハクリーンウォーターシステム(Yamaha Clean Water Supply System)」と呼ばれる小型浄水装置。2010年以来、アジア・アフリカの水資源に乏しい地域に安全な飲み水を届けている。

 同社が水ビジネスに取り組み始めたのは1980年代。二輪車の自社工場があるインドネシアで、「水道水が茶色く濁っている」という苦情が駐在員から寄せられたのを受け、家庭用浄水装置の開発を始めた。 同社が持つ既存の技術を一切使わない新規事業だった。

 2000年には、浄水器が買えない低所得層の多い農村部に水を提供するため、河川水を利用した浄水装置の独自開発に着手。インドネシアでの販売を皮切りにグローバル展開し、アジア・アフリカの15か国で42基が稼働中だ。現在の利用者は推定4万2000人に上る。

■「ローテクとは思わない」

 ヤマハ発動機が採用したのは、自然界の水浄化機能を活用する「緩速ろ過方式」 だ。砂によるろ過に加え、微生物の働きを利用しており、環境負荷や消費電力量が小さくて済む。凝固剤やフィルターを用いず、砂や砂利の交換も不要であることから、維持管理費用が安い。メンテナンスも容易で、住民による自主運営が可能だ。

「先進的な技術を導入することもできるが、現地の人たちに長く使ってもらい、オペレーションもやってもらうことを考えると、おのずと原始的な仕様が望まれる」 と、クリーンウォータープロジェクトグループの金丸正史 (Masashi Kanemaru)氏(43)はAFPBB Newsのインタビューに答えた。

 金丸氏がこれまでに装置の開発や営業で携わった国は、インドネシアやベトナム、セネガル、モーリタニアなど12か国に上る。設置後も現地で使い方の指導や品質管理に携わってきた。

「ローテクと言われることもあるが、低い技術だとは思っていない」と金丸氏。ヤマハ発動機の既存技術やノウハウに頼ることなく、緩速ろ過を生かすため砂利の大きさや砂の層の厚さなど独自に改良を重ねてきた。

「技術と情熱が詰まった装置」だと、胸を張る。