置き去りの高齢者、戦争の忘れられた被害者 ウクライナ
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■「3度目の戦争」
ゾヤ・タラン(Zoya Taran)さんは、ベッドサイドに腰を下ろし、両手で歩行補助具を握っていた。腎臓が一つしかなく、体のバランスを取るのが難しく、糖尿病で視力も衰えているが、自分は幸運だと考えている。
ロックミュージシャンの息子が、20年前に「ショービジネス」のキャリアをあきらめ、自分の世話をしてくれたからだ。
「私は年老いたおばあちゃんだ」とほほ笑みながら言った。「息子は私の目で、手で、脚で、自分には何もない」
最初は避難をためらっていた。だが、ロシアの攻撃が近くなってくるにつれ、「息子を守るため」その時が来たと決心した。
「なぜこの戦争が必要なのだろう。彼らは私たちに何を求めているのだろう」と泣きながら訴えた。
元経済学教授、ユリヤ・パンフィオロワ(Yulia Panfiorova)さん(83)は、約100人いる避難民に新たに加わった30人の一人だ。
ロシア軍に攻撃されているルガンスク(Lugansk)州東部リシチャンスク(Lysychansk)出身のパンフィオロワさんは、「これは私にとって3度目の戦争だ」と言う。
1度目は第2次世界大戦(World War II)、2度目は2014年に起きたウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との衝突を指している。
「リシチャンスクは1943年にナチス・ドイツ(Nazi)から解放された。その時にどうやって故郷に戻ったのか。もちろん、いくらかの記憶がある」
「あれはナチスだった。私たちの国は侵攻された。そして今、他の国に侵攻された。当時、自由が脅かされたが、今また同じことが起きている」と訴えた。
「私たちは戦うべきだ。でも、戦争はとても恐ろしい」 (c)AFP/Joris FIORITI