【4月20日 AFP】ロシアの侵攻を受けるウクライナで今、もともと弱い立場にある子どもたちが養護施設に置き去りにされ、人身売買の危険にもさらされている。

 米首都ワシントンを本拠とする「障害者権利インターナショナル(Disability Rights International)」の事務局長、エリック・ローゼンタール(Eric Rosenthal)氏は、ウクライナでは侵攻前から、孤児院での強制労働や性産業への人身売買という大きな問題が存在したと指摘する。

 しかし、狙われる子ども、置き去りにされる子ども、見捨てられる子どもの危険がさらに高まっているという。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、欧州最貧国のウクライナの孤児院、寄宿学校、障害者施設で暮らす子どもの数は10万人以上で、欧州全体で最も多い。しかもその多くは、親や親族は生きているが子どもの面倒を見ることができない、いわゆる社会的孤児だとされている。

 公式データによると、2月24日の侵攻以降、保護下にある未成年者のうち少なくとも8000人が国外へ連れ出されるか、ウクライナ国内で移動させられている。

 また、約3万1000人が親元に戻ったが、少なくとも2500人が避難の必要な戦闘地域から身動きできずにいると推定されている。この子どもたちを脱出させるのは難しい。

■性行為の見返りに

 ウクライナで運よく死を免れた子どもたちが、人身売買の犠牲になる恐れも高まっている。

 国際慈善団体「子どものための希望と家(Hope and Homes for Children)」ウクライナ支部のハリーナ・ポストリュク(Halyna Postoliuk)代表は、「戦争が始まった時、子どもたちは極めて孤立した、閉鎖的な環境で暮らしていた」と指摘。

 旧ソ連時代に構築された巨大な児童養護制度に対し、「適切なモニタリングが定期的に行われていないことが大きな問題だ」と批判した。

 子どもたちがそうした制度の隙間に陥り、人身売買業者の手に渡ることが懸念されていると、ローゼンタール氏は指摘する。一部の子どもはすでに、人身売買が大きな問題となっているルーマニアやモルドバの孤児院に移されているという。

 国際移住機関(IOM)はウクライナ難民に対し、国外脱出の混乱に乗じた人身売買業者に注意するよう警告している。ウクライナ当局は、孤児の避難と監視に関する新しい規則を3月に導入したが、NGOはさらなる対策が必要だとしている。

 カトリック系慈善団体カリタス(Caritas)ルーマニア支部のトマス・ハックル(Thomas Hackl)氏は、国境にいる監視チームが最近、ウクライナ人少女2人をイタリアへ連れて行こうとしていた男を阻止したと語った。人身売買が疑われたという。

「人身売買組織は避難する人に、移動手段の提供を申し出る。少女を特定の場所に連れて行こうとするなど、この男が信用できないと思えることがたくさんあった」

 ポーランドに到着した人からは、「避難場所を提供する代わりに性行為を求められた」と訴える声も上がっているという。(c)AFP/Lucie PEYTERMANN