【6月5日 AFP】ブラジル人のマルレーニ・シルバドスサントス(Marlene Silva dos Santos)さん(51)は鏡に向かい、大事そうに胸のタトゥーを眺めた。乳房再建術を受けた左胸には、手術の痕を覆うようにダイヤモンドがつり下がった花の柄が彫られている。

「手術の痕は、他人からは見えなくても、目に入るたびに心が痛みます」とシルバドスサントスさん。5年ほど前にがんと診断され、乳房の切除を余儀なくされた。「でも、今は花が見えます。こんなにきれいだと思いませんでした」と感激した様子で語った。

 サンパウロ(Sao Paulo)のタトゥーアーティスト、カルラ・メンデス(Karlla Mendes)さんが2017年に立ち上げた「私たちはダイヤモンド(We Are Diamonds)」という慈善プロジェクトではこれまで約160人の女性に対し、病気や性暴力、事故などによる身体的・精神的な傷を克服する支援をしてきた。

 このプロジェクトでダイヤモンドをタトゥーのトレードマークにしているメンデスさんは、「(タトゥーを入れる女性たちには)自身がダイヤモンドのような存在であること(中略)磨くとキラキラ輝く原石のような存在であることを思い出してほしいのです」と言う。

「嫌な記憶がよみがえる傷痕に新しい意味を与え、自分のことを好きになってもらう。そうやって私のアートで誰かの人生が変わる手伝いができるのは、とてもうれしいです」

 ケリー・ペレイラ(Kelly Pereira)さん(36)も、子どもの頃に負ったやけどの痕に花とダイヤモンドのタトゥーを入れた。

 タトゥーは傷痕を隠すためのものではなく、「傷痕について話すきっかけ」だと言うペレイラさん。「肉体だけではなく魂にも印を付けるシンプルな行為で、私たちは前向きになり、夢を持って人生も変えられると人々に伝えたいのです」と続けた。