【4月15日 AFP】チェチェン人戦闘員が四方八方に銃を乱射し、ウクライナ兵の捕虜はうつろな目でひざまずき、あるいは遺体の間を引きずられていく──ロシア南部チェチェン(Chechen)共和国の独裁者ラムザン・カディロフ(Ramzan Kadyrov)首長(45)は、自身の私兵がウクライナでロシアのために戦う様子をソーシャルメディアで自慢している。

 カディロフ氏の部隊「カディロフツィ(Kadyrovtsy)」は、チェチェンの民兵組織だ。ウクライナの人々は、侵攻してきたロシア軍の中で、カディロフツィが最も残忍だと口をそろえる。

 カディロフ氏は、チェチェン紛争でロシア側に寝返った元独立派指導者の息子で、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の忠実な配下として知られる。イスラム教徒が多数派のチェチェン共和国で、拷問や処刑など深刻な人権侵害を行っていると非難されてきた。

 カディロフ氏はプーチン氏のウクライナ侵攻を歓迎し、直ちに部隊を送ると表明。ウクライナで戦うカディロフツィの動画を誇らしげにメッセージアプリのテレグラム(Telegram)に投稿し、ロシアの主張をなぞって「ウクライナのナチス(・ドイツ、Nazis)」と戦っていると主張している。

 先月には、ロシア軍が包囲するウクライナ南部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)に入ったとして、約30人の戦闘員に囲まれた自身の写真を投稿した。また、ロシア兵を拷問したウクライナ兵を発見し、直々に「罰した」と主張した。

 カディロフツィは、チェチェンのみならず2014年のウクライナ東部紛争やシリア内戦などでも悪名が高い。

 ロシアの政治的暴力に詳しいカナダ・ラバル大学(Laval University)のオーレリー・カンパーナ(Aurelie Campana)氏は、「カディロフ部隊の参戦発表とそれをめぐるプロパガンダは、敵を不安定化させる試みの一環」だと指摘する。