【4月16日 AFP】インドで先月公開された映画『カシミール・ファイルズ(Kashmir Files)』が、ヒンズー至上主義者の少数派イスラム教徒に対する憎悪をかき立てている。

 作品は、インドがパキスタンと領有権を争う北部カシミール(Kashmir)地方を舞台にしたもの。1989~90年に、インドの実効支配地域に住んでいたヒンズー教徒数十万人が、イスラム武装勢力から逃れる様子を詳細に描いている。

 ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相お墨付きの映画で、すでに今年の興行収入ランキングの上位に入っている。

 複数の州が『カシミール・ファイルズ』に対する税を免除しチケット代が安くなった他、州によっては警察官や公務員が映画を見るための欠勤を認めた。

 AFPがフェイクではないと確認したSNSに投稿された多数の動画の中には、映画館内で報復やイスラム教徒の殺害を観客に呼び掛ける様子を捉えたものもあった。

 ある動画では、ヒンズー教の僧侶スワミ・ジーテンドラナンド(Swami Jeetendranand)さんが観客に反イスラム主義的な言葉を連呼させ、「私たちは安全だと思っているが、彼らが攻撃して来ない限り安全だというだけだ」と訴える姿が映っていた。

「(イスラム教徒は)インドだけではなく、全世界の脅威だ」

 イスラム教徒が多数を占めるカシミールでは、1947年のインドとパキスタンの分離独立以来、衝突が繰り返されてきた。

 インド政府は、カシミールでの過去30年の反乱はパキスタン側の支援を受けた武装勢力によるものとみている。インド軍は数万人を殺害したが、その大半はイスラム教徒だった。

 1980年代後半には暴動から逃れるため、パンディット(Pandit)と呼ばれるカシミールのヒンズー教徒およそ20万人がこの地を逃れた。公式統計によると、最大で219人が殺害された可能性がある。