【4月14日 AFP】トルコの漁師、シャヒン・アフスト(Sahin Afsut)さんが恐れている最悪の事態は、機雷に当たって海の藻くずとなることだ。

 ボスポラス(Bosphorus)海峡に面したイスタンブール県北部ルメリフェネリ(Rumelifeneri)村。アフストさんは普段、タラ科のホワイティングやヒメジ科のウミヒゴイ、カタクチイワシなどを取っている。

 しかし、黒海(Black Sea)の沖合2キロほどの場所で先月、一つ目の機雷が見つかって以来、多くの漁師と同じく船を出していない。

 先月28日には二つ目が見つかり、村人の不安は高まった。今月6日には黒海に浮かぶトルコ北西部ケフケン(Kefken)島沖で三つ目が見つかった。

 トルコ当局は事故を懸念しており、機雷はウクライナ沿岸から嵐で流されてきたとの見方を示している。

 一つ目を見つけた地元漁師の一人、アフメト・タルラシ(Ahmet Tarlaci)さんは機雷について「大きかった。たる半分くらいあった。(トルコ海軍の特殊)部隊が機雷を無効化するのをみんなで上から見ていた」と語った。

 ロシア国防省は先月末、ウクライナが沿岸を防衛するために敷設した機雷370個のうち10個を除去したと発表。これに対し、ウクライナはロシアの主張を否定し、ロシア海軍がウクライナの評判を落とすために機雷を流したと非難した。

 ルメリフェネリの港では1日、40メートルのトロール船を含む約100隻が待機していた。ベテラン漁師のセフキ・デニズ(Sefki Deniz)さん(42)は「知り合いの9割は(海に出るのを)やめた」と語った。

 トルコ当局が夜間の漁を禁止したことに加え、軽油価格が高騰していることから、漁期を3週間残して漁を終えることにした漁師も多い。

 レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は1日、「当面の間、機雷が問題になることはないが、油断は禁物だ」と述べた。

 24時間態勢で機雷の捜索が続けられている。デニズさんは「今、機雷は10個あると言われているが、さらに流れてきたらどうなるだろうか? 黒海は大きな海ではない。湖のようなものだ」と懸念を示した。

 ルメリフェネリでは1980年代に2度、第2次世界大戦(World War II)時の機雷による事故があった。漁師のシャバン・ウチャル(Saban Ucar)さん(32)は当時まだ生まれていなかった。だが、村では鮮明な記憶として伝えられている。

 ウチャルさんは「1983年の事故は港で機雷が爆発し、村人5人が死んだ。1989年の事故は海上での網揚げ中に機雷が船を巻き込んで爆発し、4人が亡くなった」と説明した。当時を知るデニズさんによると、犠牲者の遺体は見つかっていない。

 デニズさんは、昨年3万8500隻が通航した海上交通の要衝、ボスポラス海峡に機雷が入り込むことを恐れている。イスタンブールを分断するボスポラス海峡は、幅が700メートルもない狭い箇所もある。

 海での事故率は10%だが、「ボスポラス海峡では100%だ」と述べた。(c)AFP