【4月9日 AFP】ベラルーシ国境までわずか50キロの位置にあるウクライナ北部チェルニヒウ(Chernigiv)は、ロシアによる侵攻開始から間もなくして包囲された。

 ロシア軍は、ウクライナ東部の攻勢に向けた部隊再編のために撤退したが、同市はそれまで1か月以上にわたって砲撃と空爆を受けた。

 市内にある小児病院の地下室には、小さな手形がつけられ、虹や、はためくウクライナ国旗などが洞窟画のように描かれている。

 2月24日にロシア軍が爆撃を開始すると、幼い患者たちはこの地下室で空爆をしのいだ。

 子どもたちは日がな一日、壁に絵を描きながら過ごした。束になった風船の絵の中には、名前が書かれている──ミロスラワ、ワシルイナ、グラシャ、ウリヤ。

「数えたわけではありませんが、かなりたくさんの子どもがいました」。ウクライナ領土防衛軍のナタリアさん(30)は、息が詰まりそうな薄暗がりの中で説明した。ナタリアさんは、ロシアの侵攻開始前はインテリアデザイナーとして働いていた。

 この地下室は通常なら、住まいとして選ばないような場所だ。特に子どものためには。吹き抜けの階段は破壊され、暗がりの思わぬ所に配管が飛び出し、かび臭い。

「水がなくなり、停電して暖房が止まる前に子どもたちを脱出させることができて、本当にほっとしています」とナタリアさん。「全員ではありませんが、ほとんどの子どもたちは、文明の利器がなくなる前に避難しました」

「子どもたちは生き延びるチャンスをつかんだのです」 (c)AFP/Joe STENSON