【4月1日 AFP】31日に行われた国際サッカー連盟(FIFA)総会は、W杯カタール大会(2022 World Cup)を開催するというFIFAの決定に関する長引く対立が影を落とし、W杯がすでに同国に変化をもたらしたとジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)会長がフォローを強いられる事態となった。

 中東初開催のW杯開幕まであと235日となった同日の総会では、サッカー界では珍しく女性が声を上げ、12年前にカタールを開催地に選んだのは人権状況の観点から「許容できない」ことだったと訴えた。

 ノルウェーサッカー協会(NFF)会長のリセ・クラベネス(Lise Klaveness)氏は、人権およびロシアによるウクライナ侵攻といった他の道徳的問題について、FIFAは「手本」となる行動をしなければならないと述べた。

 カタールをめぐる議論は、インファンティーノ会長の2023年の次期会長選立候補や、FIFAが2019年から2022年の会計周期で過去最高額となる70億ドル(約8500億円)の収益を得るという発表から目をそらすものになった。この収益の大半は、W杯カタール大会に関連するテレビ放映権とマーケティングによるものだが、FIFAと同国はW杯めぐって何度も守勢に立たされてきた。

 入念に計画された総会の終盤、各加盟協会が発言を許された場でクラベネス氏は開催国カタールの人権について焦点を当て、「W杯の準備で負傷した移民労働者や、亡くなった方々の遺族に配慮しなければならない」と語った。

 カタールでは、W杯の会場となるスタジアムの建設現場で一部の労働者が命を落としており、国際機関もカタールでの一般的な労働実績の改善を求めている。

「W杯の労働者の自由と安全を保証しない雇用主に居場所はない」

 クラベネス氏のカタールに関する発言は、欧州のいくつかの国や代表チームによる発表に同調する内容だった。

 これを受け、壇上にはすぐさま大会組織委員会のハッサン・アル・サワディ(Hassan Al Thawadi)事務総長が登場。クラベネス氏がカタール当局と話をしようとはせず、自らの主張をしたのは残念だと発言した。

 アル・サワディ事務総長は、中東で初開催となるW杯は「社会や人間、経済、環境にとって真の転機となるレガシーを残す」とコメントした。

 直面している批判の多くは不公平なものだと感じているカタールは、雇用主が労働者の出国や転職を阻止することができる労働システムを廃止し、最低賃金も導入している。

 インファンティーノ会長は、カタールは「楽園ではない」としたものの、2010年に開催地に選ばれてから重要な進歩を遂げていると述べた。(c)AFP