【3月31日 AFP】北朝鮮は先週、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17(Hwasong 17)」の発射実験に成功したと発表した。これについて米韓両国の情報機関は、発射されたのは火星17ではなく旧型のミサイルだったと結論付けた。専門家は、実際の火星17発射実験の失敗を取り繕うため、虚偽情報を流したと分析している。

 北朝鮮の国営メディアは24日、火星17の「奇跡的」な発射成功を大々的に報じ、映画のような演出で金正恩(Kim Jong Un)総書記が実験を見届ける映像や画像を流した。

 しかし専門家は、北朝鮮の発表に矛盾点があることを指摘。米韓の情報機関は、北朝鮮が発射したのは2017年の実験でも使用された旧型の「火星15(Hwasong 15)」だったと断定した。

 専門家によると、本物の火星17の発射実験は16日に行われたが、首都平壌の上空で爆発し、実験は失敗に終わっていた。

 ただ、来月15日の「太陽節」の祝日には、建国の父である故金日成(キム・イルソン、Kim Il Sung)主席の生誕110周年を祝う重要な行事が行われる。専門家は、北朝鮮としてはそうした節目を控えて国内向けのプロパガンダの材料を必要としているとみている。

 北朝鮮に詳しい梁茂進(ヤン・ムジン、Yang Moo-jin)氏はAFPに対し「北朝鮮は太陽節に向け、金正恩氏を軍事大国の有能な指導者として見せることで、国民の忠誠心を高めようとしていた」と説明。しかし、火星17の発射実験が失敗する様子が平壌市民に目撃されてしまったため、その埋め合わせに「非常に強力な材料」が必要だと考えたのだろうと分析した。

 一方、韓国・北韓大学院大学(University of North Korean Studies)の金東葉(キム・ドンヨプ、Kim Dong-yup)教授は、24日の実験に使われたミサイルがいずれの型であろうと、前回のICBM実験と比較すると性能の大幅な向上が見られると指摘。今回のミサイルは「型は異なるが、性能が強化されていることは間違いない」とし、北朝鮮は米国との交渉材料とするためではなく、「国内向けの理由」でミサイル開発を進めているとの見方を示した。

 北朝鮮は以前にも兵器開発の進展について偽情報を流している。専門家によると、2016年1月に実施した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)実験が失敗した際にも映像を編集し、成功したと見せかけようとした。(c)AFP/Cat BARTON