【3月29日 AFP】米ロサンゼルスで27日夜行われた第94回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式では、俳優ウィル・スミス(Will Smith)さん(53)が、自身の妻をジョークのネタにしたコメディアンのクリス・ロック(Chris Rock)さんの顔を平手打ちするという、同賞の歴史に残る出来事が起きた。業界内外には衝撃が広がり、一部はスミスさんを擁護した一方で、その「有害な男らしさ」を非難する声も上がっている。

 授賞式終盤に登場したロックさんは、脱毛症を患うスミスさんの妻ジェイダ・ピンケット=スミス(Jada Pinkett Smith)さんの丸刈りをやゆするようなジョークを披露。しかしジェイダさんは笑わず、スミスさんは客席を立ってステージに上がり、ロックさんの顔を平手打ちした。

 その後、映画『ドリームプラン(King Richard)』で主演男優賞を受賞したスミスさんは、受賞スピーチで涙を流しながら、アカデミー関係者とノミネートされた人々に謝罪。しかし、ロックさんには謝らなかった。

 会場にいた女優のニコール・キッドマン(Nicole Kidman)さんやルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyong'o)さんらのあぜんとした表情を捉えた画像はネット上ですぐさま笑いのネタとなり、業界関係者は一斉にスミスさんを非難した。

 コメディアンらは直ちにロックさんを擁護。今後、スミスさんの行為をまねて、他のコメディアンに暴力をふるう者が出てくる可能性があると訴えている。

 米エミー賞(Emmy Awards)受賞コメディアンのロジー・オドネル(Rosie O'Donnell)さんは、スミスさんの行動を「正気を失ったナルシシストの有害な男らしさ」と非難。同じくコメディアンのキャシー・グリフィン(Kathy Griffin)さんは「私たちは今後、コメディークラブや劇場で次のウィル・スミスになろうとする人の心配をしなければいけない」と指摘した。

 一方、スミスさんを擁護する声も出ている。英国の男性アイドルグループ「ワン・ダイレクション(One Direction)」元メンバーのリアム・ペイン(Liam Payne)さんは記者団に対し、スミスさんの行動について、「彼にはその権利があった」と語った。

 脱毛症で髪を失ったマサチューセッツ州のアヤンナ・プレスリー(Ayanna Pressley)米議員はツイッター(Twitter)に、「脱毛症の人々、立ち上がれ! ウィル・スミスさん、ありがとう。毎日のように無知と侮辱に直面しながらも脱毛症と共に生きる妻を支える夫たちを応援する」と投稿。その後、このツイートは削除された。(c) AFP/Andrew MARSZAL