【3月29日 Xinhua News】中国の研究者らがベトナム北部で発見した植物化石群を研究した結果、中南半島(中国の南、インド亜大陸の東にある東南アジアの半島)北部の植物相が長い間安定していることが明らかになった。同半島北部の植生と気候は、漸新世(約3千万年前)から比較的安定しており、古第三紀末の東アジア半乾燥帯の後退後に広葉常緑樹林が北に広がった際の生物多様性の重要な根源となっている。

 研究成果はこのほど、「中南半島北部の長期的な植物相と気候の安定性-ベトナムの漸新世ハロン植物相からのエビデンス(Long-term floristic and climatic stability of northern Indochina: Evidence from the Oligocene Ha Long flora, Vietnam)」との題で、国際学術誌「Palaeogeography,Palaeoclimatology,Palaeoecology」に掲載された。

 熱帯は、現在の世界で最も豊かな植物多様性があり、生物多様性の保全にも非常に重要な意義がある。植物化石はそうした熱帯林の起源と進化を理解する上で重要な役割を担う。しかし、熱帯の植生被覆の面積が広く、溶脱作用も強く、古植物学研究の発展が遅れたため、新生代の植物化石の発見・報告が少なく、旧熱帯植物区の中心地域である中南半島での研究もほとんど行われてこなかった。

 中国科学院シーサンパンナ熱帯植物園の古生態研究グループは2016年以降、ベトナム国立自然博物館と共同で、同国で数回にわたり古植物の野外調査を行い、クアンニン省ハロン湾の北側、ハロン市ホアンボー盆地の漸新世ドンホー層からこれまで報告されていない植物化石群を発見し、「ハロン植物相」と名づけた。研究グループの黄健(Huang Jian)副研究員は、系統的な古植物学的研究により、化石群から16科38種の高等植物を同定したと説明。ハロン植物相がブナ科やクスノキ科、フタバガキ科の樹木を主体とした植物群であることを明らかにした。

 近隣の雲南省(Yunnan)南東部や華南地区の主要な古生代植物相との比較から、それらは全て「ブナ科−クスノキ科−フタバガキ科–フウ-シュロ」という特徴的な生物種群を有していることが判明。東アジアの植物相の重要な根源として「汎北部湾古植物相」との概念が打ち出された。また、古植生の復元により、植物相が非石灰岩と石灰岩の二つの植生混合物から構成されていることが示唆された。さらに、古気候の復元から、漸新世にはこの地域に現代に近い高温多湿の熱帯収束帯気候が存在したこと、モンスーンはあったが現代より弱かったことが示唆された。

 論文著者の黄氏は「中国南部、例えば湖南省(Hunan)から江西省(Jiangxi)、浙江省(Zhejiang)にかけて、青海チベット高原が完全に形成されるまでは、現代の広葉常緑樹林がなく半乾燥気候だったとみられる。中新世に青海チベット高原北部が形成され、中国南部の大部分が湿潤亜熱帯気候となり、広葉常緑樹林がベトナム北部や中国南部から徐々に北上、東進していった」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News