【3月28日 AFP】27日午後7時すぎ、フィンランドの首都ヘルシンキの鉄道駅にロシア・サンクトペテルブルク(St. Petersburg)発の高速列車「アレグロ(Allegro)」が到着した。アレグロの運行は28日以降、停止されるため、ロシアと欧州連合(EU)を直接結ぶ最後の列車となった。

 ロシアがウクライナに侵攻して以降、西側の制裁で移動手段が断たれる前に出国しようとするロシア人がアレグロに殺到。乗車券は常に完売状態で、乗客数は1日当たり約700人に上っていた。

「猫を連れてきたのでもう戻る理由はない。大切なものは全部持ってきた」。愛猫2匹の入ったペットキャリーと一緒に列車を降りたアレックスさんは言った。モスクワ出身だが、数年前からヘルシンキに住んでいる。

 母親と乗車していた大学生のイバンさんは、「ロシアの状況はどんどん複雑になっている」と語った。イースター休暇で留学先のモスクワからポルトガルに一時帰国する途中で、数週間後には試験のため大学に戻る予定だ。「どうやってモスクワに戻るかは分からない。状況を見守りたい」

 航空業界でもロシア─欧州間の直行便は運航を停止している。ロシアを出国する人は、トルコやセルビア経由の航空便を使うか、陸路での移動を余儀なくされている。

 フィンランド鉄道(VR)は政府の要請で、ロシアに滞在するフィンランド人が退避できるよう、先月24日の侵攻以降も運行を継続していた。

 しかし、政府は今月24日、厳しい対ロ制裁を考慮すれば「運行継続はもはや適切ではない」とVRに通達。これを受け、運行停止が決まった。

■パートナーシップの象徴

 フィンランドとロシアの国有鉄道が共同運行するアレグロは、両国のパートナーシップの象徴として2010年に開通した。ヘルシンキ─サンクトペテルブルク間(約400キロ)を3時間半で結ぶ。所要時間は開通前に比べ2時間短縮された。

 最初の列車にはタルヤ・ハロネン(Tarja Halonen)大統領(当時)とウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が乗車し、開通を祝った。

 ヘルシンキで働きながら定期的にサンクトペテルブルクの友人や家族を訪ねている50代のアリヤさんは、「早く通常運行に戻ってほしい」と語った。(c)AFP/Sam KINGSLEY