【3月27日 AFP】インド・デリー首都圏で、瀕死(ひんし)の状態から回復したハゲワシが再び空に羽ばたいている。献身的に手当てをしているのは、猛禽(もうきん)類の保護活動をしている2人の兄弟だ。

 デリー東部には、食肉処理場や魚市場の生ごみを狙うさまざまな猛禽類が生息している。しかし、たこ揚げの糸に絡まったり、自動車にぶつかったりなど、人間の活動に巻き込まれて大けがをする鳥は数知れない。

 その中で幸運な一握りの鳥だけが、ナディーム・シェザド(Nadeem Shehzad)さん(44)とモハマド・サウド(Mohammad Saud)さん(40)兄弟の手当てを受けている。2人はニューデリー郊外で、けがをした猛禽類の世話をする「ワイルドライフ・レスキュー(Wildlife Rescue)」という団体を運営している。

 保護活動は決して楽ではない。インドでは猛禽類は不吉と見なされ、理念に賛同して寄付してくれる人は少ない。

「猛禽類は縁起が悪いと思われているのです」とシェザドさんはAFPに語った。

 シェザドさんとサウドさんは子どもの頃、けがをした猛禽類を見つけ、草食動物を専門に扱う動物病院に運んだが、治療を拒まれて落胆した。

 その後2人は、けがをした鳥を自宅で回復させる取り組みを始めた。

「そのうちの何羽かは野生に返り、私たちにとって大きな自信になりました」とシェザドさんは言う。

 狭いオフィスの屋上では現在、大きな鳥小屋の中で色とりどりの猛禽類を保護している。回復の度合いはさまざまだ。

 絶滅危惧種のエジプトハゲワシも1羽いる。明るい黄色のくちばしと、頭部のボサボサのクリーム色の羽ですぐに見分けがつく。

 処置室でサウドさんは、翼をパタパタと動かす「患者」と格闘していた。針金が巻き付き、血が付いた羽毛が固まり、その下の骨がむき出しになっている。

 治療の成功は、けがをしてからどれだけ早く発見できるかどうかにかかっているとサウドさんは話し、痛々しい様子のもう1羽の鳥を指さした。古い傷口の周りが変色している。

「2、3日で死ぬでしょう。傷を負った部分が壊死(えし)しています」