【3月27日 AFPBB News】ガーナの首都アクラ郊外に広がるスラム街。どこまでも続く廃棄物の荒野を眺めながら、長坂真護(Mago Nagasaka)氏(37)は思いをめぐらせた──。ここに捨てられた電子機器の破片をアートの一部に利用できないか。そして、万が一、作品が利益を生めば、アフリカが抱える貧困の連鎖を断つ一助になりはしないか。

 6年前、報道写真がきっかけで世界最大規模の電子機器廃棄場と言われるアグボグブロシー(Agbogbloshie)地区を知った。自分の目で見てみたいと、2017年に単独で足を運んだ。

 アグボグブロシーの労働者は、廃棄物の中から銅などの金属を回収して生計を立てている。携帯電話やコンピューター、テレビ、プラスチックなど、世界中から持ち込まれた機器を燃やすことで、有害な煙にさらされるリスクが伴う。

 水銀やヒ素などの有害物質が含まれているため、住民の健康に直接被害をもたらすだけでなく、地質や大気、近くを流れる河川を汚染して、地域全体の環境に大きな影響を及ぼす恐れがある。

「国連(UN)の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の17指標のすべて反対のものが詰まっているような場所」と、長坂氏はAFPBB Newsのインタビューに答えた。

 アグボグブロシーの若者が健康被害を顧みずに黙々と機器を燃やす姿を見て、「人のためにアート制作をやってみよう」と、初めて思えたと話す。キャンバスや絵の具が十分に買えなかった頃を振り返り、「ごみを画材として使えば一石二鳥だと思った。ごみも減るしメッセージ性もあるし、画材になる」と語った。

「E-waste(電子ごみ)の墓場」に捨てられていた廃棄物を持ち帰り、立体オブジェのようにキャンバスにちりばめた作品を手掛けた。多くの日本人にガーナの現状を知ってもらいたいと作品展を開催したところ、1000万円を超える値が付いた。その売り上げでガスマスクを購入し、ガーナに届けた。

 ガーナの廃棄物がアートの一部として買い取られ、その利益を現地に還元し貧困をなくす。このサイクルをビジネスとして成り立たせることが長坂氏の目標だ。