■「核共有」議論も浮上

 ウクライナ危機は、防衛予算拡大を主張する勢力にとって有利に働く可能性が高い。自民党は昨年、防衛予算を現行の国内総生産(GDP)比1%から2%以上に引き上げる長期目標を公約した。ブラウン氏は、この案は「現実的に推進可能なものとなった」とみている。

 敵基地攻撃が可能な無人機といった攻撃能力の整備をめぐる議論は、憲法上の制約もあり、論争の的となってきた。しかし、ハリス氏は「ウクライナから届く映像は、日本の国防力増強を望む人々にとって追い風になるだろう」と予想する。

「『自衛』(という表現・概念)は、これまで以上にイチジクの葉(都合の悪いものを隠すための覆い)でしかないとみられるようになるのではないか」

 さらに波紋を呼んでいるのが、安倍氏をはじめとする一部議員の間から「(米国の核兵器を受け入れ国が共同運用する)核共有」 をめぐる議論を進めるべきだとの声が上がり、自民党が検討に着手しようとしたことだ。

 少なくとも今のところは遠すぎる目標のようだが、広島と長崎に原爆を投下された被爆国でそうした議論を求める動きが出てきたこと自体、ウクライナ危機の影響力の大きさを示している。

「この戦争が日本国内の議論に与える影響を、私たちはまだ最後まで見届けているわけではないと思う」と、ハリス氏は語った。(c)AFP