【3月20日 AFP】世界室内陸上選手権(World Athletics Indoor Championships Belgrade 22)は19日、女子走り高跳び決勝が行われ、ウクライナのヤロスラワ・マフチク(Yaroslava Mahuchikh)が、ロシアによる母国への武力侵攻がもたらした「完全なるパニック」を乗り越えて金メダルを獲得した。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、マフチクは自宅から逃げ出して地下室へ隠れなければならず、その後3日間かけて2000キロの距離を旅し、自身にとっての最前線となるセルビア・ベオグラードにたどり着いた。

 ドニプロ(Dnipro)の自宅を離れたのは、攻撃が激しくなったわずか3週間前のことで、当然ながら練習の優先度は低かった。それでも「何百本も電話をかけ、何度も進路を変更し、爆発と炎、空襲警報」の中で何とかセルビアへ行く方法を見つけ出した。

 マフチクは「このメダルはウクライナと母国のすべて、全国民、全兵士のためのもの」と話し、「自分は国際大会で、母国を守らなくてはならない」と続けた。

「フィールドへ出る前に頭に浮かんだのは、ウクライナのことだけ。あちらでは恐ろしいことがたくさん起こっている」

「ロシア軍はウクライナ国民を殺し、私たちの国を殺し、子どもたちやウクライナの未来を殺している」

 欧州室内女王で、昨年夏の東京五輪では銅メダル、2019年の第17回世界陸上ドーハ大会(17th IAAF World Championships in Athletics Doha)では銀メダルを獲得しているマフチクは、1メートル88からスタートし、2回の失敗をへて2メートルを成功。さらに2メートル2を跳んでエレノア・パターソン(Eleanor Patterson、オーストラリア)に圧力をかけた。

 パターソンはこの高さをパスして2メートル4にバーを上げたが成功できず、マフチクは優勝を喜び、観客はウクライナ国旗も振りながらスタンディングオベーションでたたえた。(c)AFP/ Luke PHILLIPS