【3月21日 AFP】1960~70年代に行われた米航空宇宙局(NASA)の有人月探査ミッション「アポロ(Apollo)計画」では、計2196点の岩石サンプルを地球に持ち帰った。だが、50年前に採取されたサンプルの最後の数点は、最近になってようやく開封作業が始まった。

 サンプル管は後年の最新技術を待って分析するために、その間ずっと密封状態で保存されていたのだ。

 月面でそのまま真空密封されたサンプルはわずか2本で、このうち、最初に開封されたのが「73001」と呼ばれるサンプルだ。

「73001」は1972年12月、アポロ計画最後の着陸ミッション、アポロ17号(Apollo 17)のユージン・サーナン(Eugene Cernan)、ハリソン・シュミット(Harrison Schmitt)両宇宙飛行士が採取した。

 全長35センチ、直径4センチのサンプル管を、月面のタウルス・リトロー(Taurus-Littrow)谷の地盤に打ち込み、採取された岩石だ。密封された管の中には、水や二酸化炭素などの気体や揮発性物質が含まれているかもしれない。

 今回の開封作業の目的はそうした気体を抽出し、近年著しく精度が向上している分光測定技術を用いて分析できるようにすることだ。ただし気体は、極めて微量しか含まれていない可能性が高い。

 2月初めにサンプル管本体を覆っていた保護管を取り外したが、その時点で月の気体は検出されなかった。つまり、本体は密封状態を保っていたことが示された。

 2月23日からは、本体に穴を開けて内部に含まれる気体を採取することを目的とした数週間にわたる作業が開始されている。

「73001」の開封後は、密封されたままの月のサンプルは残り3点となる。では、残りの開封作業はいつになるのだろうか。

 NASAの試料キュレーター、ライアン・ジーグラー(Ryan Zeigler)氏は、「さらに50年待つようなことはないだろう」と話す。特にNASAの次期月探査計画「アルテミス(Artemis)」でサンプルが持ち帰られ、「残りの未開封コアサンプルの一つとリアルタイムで直接比較できれば素晴らしい」と語った。

 NASAはこのアルテミス計画で、2025年に再び人類を月に送り込む目標を掲げている。実現すれば大量の気体が採取されるはずだ。現在進められている実験は、そのための準備を万全にする一環となる。(c)AFP