【3月15日 AFP】西側諸国による対ロシア制裁が強化される中、中国メディアはウクライナ侵攻をめぐり、ロシア批判を避け、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に同情的な報道を展開している。

 中国政府は、緊密な関係にあるロシアに対する支持を表明していないが非難もしておらず、米国と北大西洋条約機構(NATO)の「東方拡大」が緊張を激化させたと主張している。このような政府見解は、厳しい報道統制下にある中国の国営新聞・テレビやソーシャルメディアでも共有されている。

 新華社(Xinhua)通信は、侵攻が始まった先月24日、「特別軍事作戦」であり、ロシア政府にはウクライナを占領する「意図は全くない」と報じた。

 数日後、中国中央テレビ(CCTV)は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領が首都キエフから逃げたとするロシア側の虚偽の主張を伝え、他の中国メディアもすぐさま同様の報道を行った。

 一部の中国メディアは、ウクライナ軍と国民の間に「ネオナチ(Neo-Nazi)」思想が急速に広がっているというプーチン氏の主張を報じている。

 先月インターネット上に流れた情報によれば、国営メディアはロシアに不利な投稿や親西側的な内容を含む投稿を掲載しないよう当局に指示されているとみられる。ウクライナ情勢の報道では「侵攻」といった表現を避け、「紛争」「戦闘」などの言葉が使われている。

■検閲とナショナリズム

 北京冬季パラリンピックの開会式で国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ(Andrew Parsons)会長が行った反戦スピーチは、中国のテレビ放送では同時通訳されなかった。

 3月初旬のサッカーのイングランド・プレミアリーグの試合も、選手がウクライナに連帯を示すと予想されたことから放映されなかった。

 こうした中、中国のネットユーザーもロシアへの同情を示している。ソーシャルメディアの微博(ウェイボー、Weibo)にはプーチン氏を支持するハッシュタグが乱立。同氏を豪胆だと称賛するコメントや、ウクライナ人に降伏を呼び掛ける投稿も見られる。

 一方、国営メディアはロシアのプロパガンダに乗っていると指摘する記事は「偽情報」として削除している。