【3月20日 AFP】英国に移り住んで20年以上になるスウェーデン生まれのミア・ハンソン(Mia Hansson)さん(47)は、世界的に有名な織物「バイユーのタペストリー(Bayeux Tapestry)」の複製を実物大で制作している。

 イングランド東部ケンブリッジシャー(Cambridgeshire)にある自宅のソファに座り、刺繍(ししゅう)のステッチを一つ一つ慎重に刺して、ノルマン人の王によるイングランド征服の物語を刺繍糸でつづっている。全長70メートルに及ぶ大作に取り掛かったのは2016年だ。

 約1000年前に制作されたオリジナルのタペストリーは、英国と欧州の度重なる衝突の歴史を象徴している。

 元教師のハンソンさんは「何もすることがなくて退屈していました。すぐには仕上がらないプロジェクトが必要だったのです。そこで思いつきました。バイユーのタペストリーよりも壮大なプロジェクトなんてないでしょう」と語る。過去5年半、毎日3~4時間を費やし、今年1月にようやく半分までできた。

 ハンソンさんはオリジナルのタペストリーの隅々まで熟知していて、作者の間違いさえ指摘できる。例えば「ここには兵士の頭が4人分あるのに、足は4本しかないでしょう」と指さす。「でも、これを正すことなんて、私にはできません」

 イングランドで制作されたと考えられているオリジナルは、2007年に国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の「世界記憶遺産」に登録された。

 ハンソンさんは「記憶に間違いがなければ、(使用する)毛糸は全部で約8000メートルです」と話す。完成の目標は今から5年後、着手した日からちょうど11年後となる2027年7月13日だ。

 カナダでは、バイユーのタペストリーの複製を10年かけて完成した人がいると、ハンソンさんは聞いている。「でも私の知る限り、欧州では誰もいません」

 映像は2月24日撮影。(c)AFP/Valentine GRAVELEAU