■「世界のトップアイテムに」

 材料は見つかったが、すぐに別の問題が浮上した──極細の糸を扱うことのできる織物職人の確保だ。

 ダッカモスリン産業の崩壊から2世紀、バングラデシュは再び世界の繊維産業の中心地となり、衣料業界で働く人は多い。だが、復活プロジェクトでは、繊細な糸を扱う紡績業者や織物業者の中から職人を探し出す必要があった。

 ダッカ周辺の村々には「ジャムダニ」と呼ばれる繊細な手織りの布で、サリーを製造する工房がある。チームはそこで候補となる職人を見つけた。

 プロジェクトに迎えられた職人の一人は「どうやって作業したのか分かりません。とにかく高い集中力を求められます」と言う。

「完璧な精神状態でいることが必要です。怒りや心配事があったら、こんな細い糸を手で紡げません」

 ダッカモスリンで使う糸は、ジャムダニ用の太さの4分の1程度しかない極細の糸だ。作業習得までには数か月を要した。2人の職人が休みなく8時間作業して、2.5センチの布を織り上げるのがやっとだ。

 世界中のファッション界の業者と取引する工場経営者の一人は「私たちはダッカモスリンを、世界のトップアイテムにしたいのです。偉大な歴史があるのですから」と語った。(c)AFP/Shafiqul ALAM