【3月13日 AFP】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領が、俳優時代に主演したコメディードラマ「国民の奉仕者(Servant of the People)」の放映権を求め、スウェーデンの首都ストックホルムの小さな企業に世界中から問い合わせが殺到している。

「とても忙しい。世界中から放映権を購入したいと連絡がある」と、放映権管理会社「エコー・ライツ(Eccho Rights)」の共同創業者、ニコラ・ソダールンド(Nicola Soderlund)氏は語った。

「国民の奉仕者」は、ゼレンスキー氏演じる高校教師が突如大統領になる物語で、ウクライナで2015年から3シーズンにわたって放映され人気を博した。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、英国のチャンネル4(Channel 4)、ギリシャのANT1、ルーマニアのProTVなどが新たに放映権を購入した。「先週は確か15件の契約を結んだ。今は20か国と交渉中だ」とソダールンド氏。「直近の問い合わせは南米からだった。ネットフリックス(Netflix)とも交渉している」

 イタリアだけでも現在3、4社の放送局が放映権を争っている。ギリシャではすでに毎晩ゴールデンタイムに放映されている。

「ウクライナ人への連帯の表明でもあり、ゼレンスキー氏とは何者なのかを知りたいという好奇心でもある」と、ソダールンド氏は説明した。

 ゼレンスキー氏はロシアの侵攻に対し、勇敢な決意を示し世界に感銘を与え、国際的に一気に名を上げた。

 ソダールンド氏は10年前、ゼレンスキー氏が企画したゲーム番組がきっかけで同氏と知り合った。一般人がコメディアンを笑わせるという企画はその後、ベトナムや中国、フィンランドにも販売された。

「(ウクライナの首都)キエフでゼレンスキー氏とランチをした」と、ソダールンド氏は当時を振り返った。「クレイジーで面白いアイデアをたくさん持っていた」

■必要とされた英雄

「とても面白くて視聴者に愛される大人気コメディアン」が、やがてロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の一番の標的となり、「国を象徴し、国民を代弁する世界的指導者」になるとは想像もつかなかったという。

「トランプ(Donald Trump、前米大統領)の後には、彼のような英雄が必要だった」と、エコー・ライツのフレドリック・アフマルムボリ(Fredrik af Malmborg)最高経営責任者が口を挟んだ。

「国民の奉仕者」の成功を足掛かりに、ゼレンスキー氏は大統領に当選した。

「ゼレンスキー氏はいつも『米国ではずいぶん前から俳優が大統領になっている』と言っていた」

 エコー・ライツは、ゼレンスキー氏がプロデュースした別の番組の放映権も販売している。同社はこれまでに5万ユーロ(約640万円)をウクライナ赤十字社(Ukrainian Red Cross)に寄付しており、今後契約が増えればさらに寄付する予定だ。(c)AFP/Marc Preel